東京永久観光

【2019 輪廻転生】

あの世のチェチェン

今さらだが、2010年の重大ニュースといえば、ジャーナリスト常岡浩介さんがアフガニスタンで誘拐され解放された事件があるじゃないか! あまりに報道されなかったから忘れていたよ、というかそもそも知られなかったという点が、異様に重大。消息スクープが本人のツイートだった点も特記すべき点。

http://bit.ly/epFkCi

その常岡さんの本『ロシア 語られない戦争―チェチェンゲリラ従軍記』を手に入れた。プロローグを読むかぎり、最適にまとまった文章で、かつ、極めてエキサイティング。

ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記 (アスキー新書 71)

《彼らを支配するのはイスラムと、部族の掟と、諜報機関の陰謀と麻薬、そして暴力だ。日本の生活で私が維持していた常識や日常の感覚はどこかへ吹き飛んでしまって、現実にしがみついていることが難しくなってゆく。私はいつも自問していた。ここはどこなんだ、と。》

チェチェンは、アジアでもヨーロッパでも中東でもないのだという。そしてイスラム化された時期はとても最も遅く、他のイスラム教徒からは異端扱いをされているが、キリスト教を受け容れたことは一度もないそうだ。へ〜の連続だ。

民族衣装で馬に乗り、大きな剣とロケット砲を身に付けたチェチェンの兵士をみた衝撃を、常岡さんは、中世にタイムスリップしたか、近未来SFか、指輪物語か、と書いている。

世界はいろいろあるとしか言いようがない。たとえば、あの世はめったに行ってくることはできない(臨死体験でもしなければ)。この世でも行きにくい秘境はいくつかある。しかしチェチェンは、のんきな観光客はもちろん、ふつうのジャーナリストにも、あの世に近いほど遠いのか?