東京永久観光

【2019 輪廻転生】

三顧の礼

鬼界彰夫ウィトゲンシュタインはこう考えた』。まずじっくり読み、付箋を貼りながら再びじっくり読み、付箋を剥がしながら改めてじっくり読んだ。それくらい価値と恩義を感じた一冊だ(しかも新書)。ウィトゲンシュタインの哲学の一貫性そして核心というものが、たしかな手応えをもって捉えられている。こんなこと、専門家でも熱意より諦めが勝ってしまう所業ではなかったのか。だから、ウィトゲンシュタインの解読となると、謎を残すのがまるで慣習のようで、あとは随意に自らの課題のほうを膨らませて涼しい顔、そんなことも多かったはずだ。だいたいウィトゲンシュタインに一貫性や核心なんて存在しないんだという説も強いと思われる。しかし、この本はそうではない。ウィトゲンシュタインの著作は、最近公開された遺稿に照らすことでやっと理解できるとの前提に立ち、その再構成を、まるごと、しかも厳密に、試みた。その成果。●しかし、ちょっと読み疲れて、中身や感想を書く余力がなくなった。

●ちなみに、最近、デビッド・リンチの映画『マルホランド・ドライブ』(DVD)を観たのだが、ストーリーの不可解さにただ呆然としてしまい、ここに一貫性や核心なんてないんじゃないかと諦めそうになった人も、たとえばこのサイトの解読などを知ると、「ああそうだったのか!」と謎が氷解する思いをするだろう。『ウィトゲンシュタインはこう考えた』は、たぶんそんな役割を果たす。

ウィトゲンシュタインはこう考えた-哲学的思考の全軌跡1912~1951 (講談社現代新書)