東京永久観光

【2019 輪廻転生】

So far away from home


なんの因果か昨夜はまた羽田空港へ行った。今度はそこで人と会う。帰ったのは空の便がすべて終了した時刻で、電車(京浜急行)も最終。途中で止まって降ろされた。いつも素通りしていた京急蒲田駅。深夜12時半。改札がどこかも分からなければ、ここが蒲田のどの辺りかもまったく分からない。人の流れに合わせたりたまに聞いたりしながら、とりあえずJR蒲田駅を目指す。これがずいぶん遠い。最初やや曲がったアーケード街がずいぶん長く続き、店はほとんど閉まり人通りも少ないものの、初めてのその景色に、ふとバンコクや香港の中心街を夜中に徘徊したときのことを思い出した。JRもやはり品川方面はもう電車がない。川崎方面はまだ走っているのがむしろ意外だった。さて飯でも食べるか。ちょっとずっと気になっていながら訪ねていなかった蒲田は、思いのほか巨大な繁華街だ。「そぼ降る雨」という言い方がぴったりかなどと考えつつ、透明傘を手にうろうろ。路地を入ると雨とネオンでぼんやり光る路上にキャバクラの客引きが次々に立ちふさがり、誘われるまま・・・いやそれをかいくぐり、まだやっている地元の中華屋に入った。こんな時刻のこんな知らない街のせいか、中にいた客の服装や仕草は、ふだん渋谷や渋谷で見るのとはいわば人種が違っているかのようだった。だいたい初めて入る中華屋などというものは必ずどこかしら奇妙なものだ。それに、深夜のこんな時刻に自宅から遠く離れた所で外食するというのは、考えてみれば、外泊しているとき以外ありえないとも言える。かなり素朴だが、「So far away from home」な思いさえあれば旅行気分なんて出来上がってしまうということだろうか。ともあれ鶏の辛味炒めとライスはとてもうまかった。漫画喫茶で夜を明かして、今ごろ読んでいる「MONSER(浦沢直樹)」を最終巻までいこうかとか、向こうに見えるカプセルサウナの看板も気になるとか思ったが、けっきょくタクシーを拾って帰ってきた。そのタクシー、日中は羽田空港を根城にしており、客を遠くまで乗せて行ってもすぐ羽田に戻ってくるという。空港は確実に客がいて長距離も多いからそのほうが効率的だというのだ。飛行機の最終便(那覇行きだとか)が終わると、こんどは空港を離れ、近くの蒲田や品川の駅に移動する。蒲田はJRが品川方面も川崎方面も最終電車の終点なのでタクシー客が多いらしいのだ。このあいだは大磯まで行きましたよと話す。きょうは雨なので客は特にあふれていた。しかしこの時刻を過ぎれば客はめったになく、今夜も私を送って仕事はおしまいだという。業務を終えたらどこにいても高速道路を使って車を戻せばよいルールらしい。タクシーは月に60万売り上げがあるとその6割が給料になるそうだ。売り上げが80万になれば歩合はさらに増える。いつも車内に一人で社内的対人関係的ストレスがなくていいですね、などと言ってみたりした。フロント席の写真をみたら杉田二郎に似ていた。