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【2019 輪廻転生】

★Essential細胞生物学(続き)

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2022/07/09/000000 から続く

 

私たちの体を作るタンパク質は20種類のアミノ酸の組み合わせで出来ている。《この20種類のアミノ酸がどのように選ばれたのかは、生命の進化をめぐる謎の1つであり、ほかのアミノ酸ではだめだったという明白な化学的根拠はない》(Essential細胞生物学 p.56)

《しかし、これらのアミノ酸を一度選択した後、進化の過程でそれを利用した化学反応がどんどん増えたので、変更できなくなったのだろう。細胞が利用するアミノ酸の種類を変えるには、細菌か植物か動物かによらず、それにあわせてすべての生体の代謝経路をまるごと取り替えなければならない》

 

「何故うちはこの親なのかこの子なのかこの夫なのかこの妻なのか」「何故うちの国はこの政党だったのかこの議員だったのか」――そうした不条理にもさいなまれる。しかしたまたまそうだったのであり、とりあえずそれでやってきたのであり、もはやそれでやっていくしかない、と考えることもできる。

 

 *

 

昨日は、人体の営みにおいて酵素が決定的・不可欠の役割を担うことを知ったばかりだが、今日は、タンパク質がどんな構造をしているかを知り、またもや最大級に驚く。というか、昨日まで何十年もそれを知らずに生きてきたことが信じられない。

「タンパク質には主鎖と側鎖があります」とか、ぜんぜん知らなかったわけだが、それって、「樹木には幹と枝があります」と聞いて「あ〜そうか〜そうだったか〜」とメモを取っているに等しい。

多種のタンパク質が1つ1つ独自の仕事をするのは、1つ1つが独自の立体の形をしているからであることが、よく知られている。その立体形を作るために4つの力が働いていることを、今日ありありと知った。4つとは「水素結合」「静電引力」「ファンデルワールス引力」そして「疎水効果」。

まるで、「強い力」「弱い力」「電磁気力」「重力」と4つの力が働くことで、この宇宙のすべては出来上がるんですよと、聞いたときの気分に似ている。

 

タンパク質を立体化させる4つの力は、化学の話なので、絵にもできて直感的によくわかる。あ〜なるほどと。宇宙を作る4つの力のほうは物理学の素粒子の話なので、絵にできなくもないが「ホントかよ」といつも首をかしげる(ホントだと思うが)。生物学には紛れもなく真に迫った感があるということ。

 

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(10月1日)

→《細胞は、毎秒数百万回もの反応を行う小さな化学工場といってよい。この絶え間ない活動には、食物のかたちで取り入れる原子と、エネルギー源とが必要である。原子もエネルギーも結局は、非生物から得なければならない》――聖書を拝読している気分になった(第3章の扉)

生物の基本ユニット細胞の営みにも、当然エネルギーや熱の出入りは必須だが、そこで奇妙なのは、乱雑さを増し秩序を失う一方であるはずの宇宙にあって、細胞の内部だけは乱雑さを減らし秩序を増やしていること。エントロピーの原理に反するこの事情はよく知られているが、そのからくりの創世記。

 

◎『Essential 細胞生物学』https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226825/