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【2019 輪廻転生】

★脳の大統一理論

https://www.amazon.co.jp/dp/400029699X   

『脳の大統一理論 自由エネルギー原理とは何か』(乾 敏郎ほか)

脳は何をしているのか。いろいろ指摘できるが、要するに「推論をしている」。そのとき中枢(脳)と末梢(目や耳や手足や皮膚や内蔵)はボトムアップだけでなくトップダウンでもやりとりする。知覚も意思決定も感情もこの図式でOK。そんな大胆で巨大な原理を同書は示す。

「脳ってどうにもわからなかったけど、そうか推論をしてたのか!」は、「生物ってどうにもわからなったけど、そうか進化をしてたのか!」という閃きと難問氷解に匹敵する。「物体の動きってどうにもわからなかったけど、そうか重力に応じて引き合っている(ように見ればいい)のか!」にも匹敵する。

「アイデアは非常にシンプルで、非常に美しいため……理解したときには、誰もが『これ以外にはありえない』と言い合うだろう」。ホイーラーという人が物理学の統一理論発見を空想してそう言ったそうだが、「脳は推論をしている」という大胆仮説は、まさにそんな途方もなさを思わせる。

 

しかしながら(だからこそ)、その原理が普遍的に見えれば見えるほど「それって当たり前なんじゃないの」という気もしてくる。

ボトムアップがあればトップダウンもあるのだよ」と言われると「あ〜そうだったのか〜」と同時に「そりゃトップダウンがあればボトムアップもあるだろうさ」という感じ。「板というものにはだね、表があれば裏もあるのだよ」というような大統一原理。

たとえば「中枢と抹消とがある」は神経系に当てはまるが会社にも当てはまる。あらゆる事象に当てはまりうる。それどころか、「表と裏がある」「中枢と末梢がある」「上りと下りがある」――こうした原理は、そもそも事象がなくても、つまり宇宙がなくても自立してあるのではないか?(いやいや…)

 

なお、茂木健一郎氏は、このあいだ東浩紀氏との対談(以下)で、自由エネルギー原理なんてぜんぜん大したことないですよ、という趣旨の発言をしていたので、「そうなのか」とも思った。
https://twitter.com/tokyocat/status/1487325192569630720

 

さてさて。『脳の大統一理論』が示す「脳は推論している」という仮説は、かなり前に読んだ『考える脳 考えるコンピューター』(ジェフ・ホーキンス 他)を思い出させた。同書は「脳は記憶と予測をしている」と言っていた。

当時の感想(下)長過ぎるので注意されたし。

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/20051011/p1

 

(承前)https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2021/01/16/000000