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【2019 輪廻転生】

★「死」とは何か/シェリー・ケーガン

「死」とは何か/シェリー・ケーガン

 

本屋でいつも気になりつつ避けていたのは、表紙の雰囲気が邪魔をしていた。悟りっぽいというかチャクラっぽいというか印を結んでるじゃないかというか。だがまったく違った! 徹頭徹尾哲学。面白い。私の代わりに書いてくれた感。

 

第3章では、自分が死んでいるところは本当に想像できないのか、と問う。答えは「想像できる」。意外といえば意外だが、意外なわけがないといえば意外なわけがない。――ずいぶん昔、野矢茂樹『哲学・航海日誌』で「他人の痛みはわかるのか」を読んだのが思い出される。

というわけで当然かもしれないがウィトゲンシュタインっぽい。そして結論というなら最初から示されているようでもある。すなわち「死んだら終わりです」。思考とは誤解をしないことを指すのだ。…ただし人生とは誤解をすることを指すのかもしれないが。

 

ところで文響社は『うんこドリル』を出しているところだった。
https://bunkyosha.com/books/category/unko

 

《「自分が死を免れない」と信じていると同時に信じていないなどということが、どうしてありうるのか?》《ひょっとしたら、人が意識して信じていることと、無意識に信じていることを区別する必要があるのかもしれない》《私たちは「心底」は信じていないのだ》…などなど。ふむふむ。

 

おそらく宇宙というものが実は深淵だったり神秘だったりしないように、死もまたそうでないとしても仕方ない。しかし反対に、たとえばうんこというものが深淵だったり神秘だったりするのだとしたら、死もまたそうであってもいい。

 

第4講「死はなぜ悪いのか」《死のどこが悪いのかといえば、それは、死んだら人生における良いことを享受できなくなる点で、それが最も肝心だ》――結局これが結論だった。長く曲がりくねった展開のあげく直感や常識をまったく超えない本ともいえる。いいのか?

 

全体に「考えることの運転免許教習所」に通ってるような感じがしている。アクセルとブレーキ、ハンドルさばき、車庫入れ、坂道発進

基本、基本の繰り返し――それが哲学か。