なんと私は今、ディープラーニングが何なのかが、わかりつつある。
『相対化する知性』第2章読書中。
なんで今までわからなかったのか。わからなかったのではなく、今まで知らなかっただけだろう。もっと言えば、単にそれが書いてある本を読まなかっただけだ。本は偉い。
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8236.html
なお、この本のサブタイトルは「人工知能が世界の見方をどう変えるのか」。実は私がこの本に期待した核心はもっと先の第2部にあり、そこでは「人間は世界がどのようにあると考え、どのようにそれを知ることができると考えるか」が、人工知能とともに変わる、という話になる。
私が「人工知能、なんかすごい、すごいすごい」と暇さえあればツイートするのは、まさにこの第2部のような問いが浮上するからこそだが、案外そうした核心の考察には出会わない。しかしこの第2部はそこに直結しているとピンときて心が踊った。しかも行きがけの駄賃(第1部)がまるで金貨だった!
ところで、この本を知ったのは、もう昨年の暮。読売新聞の読書委員が選ぶ「2020年の3冊」で、瀧澤弘和さんという方が推薦していた。3冊とも、これは絶対読まねばという直感が働いた。なお別の1冊は、以前から何度も書名を挙げながらすごすぎて感想を言えていない『〈現実〉とは何か』だった。
もう1冊は『国家・企業・通貨』(岩村充)で、ちょうど経済に興味が向いていた時期だったこともあり、まっさきに読んで勉強になった。
本は良い。本のように良いものは本のほかにはなかなかない。そして、良い本は遍在していない、偏在している。ずいぶん長く生きてきて、やっとこんなことを言うのも、どうかと思うが、つくづくそう言いたい。
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/feature/CO036371/20210104-OYT8T50051/(良い本は偏在する)
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『相対化する知性』第1部(松尾豊)は、行きがけの駄賃なんてものではないな。完全に更新された人間原論とでも呼ぶべきた。
以下でご本人の解説を視聴できる(第2部の著者で同書の企画者 西山圭太さんの話も)
https://www.youtube.com/watch?v=iGzz_rvsijA
以前視聴したこの動画も、その人間原論仮説の紹介ということになろう。
https://www.youtube.com/watch?v=_tnPdEZSSN4
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(3月26日)
『相対化する知性』第2部へ。
人工知能をめぐり「そもそも人間の認知構造とは?」 さらには「この世界自体にあるとでも言うべき認知構造とは?」がテーマ。人工知能が社会にもたらす衝撃については多く語られていると思うが、こうしたテーマの探究はなかなか目にしなかった。とても興味深い。
第1部では予想を超えて覚醒したが、第2部もまた、めくるめく深さと広さ。たとえばーー
エントロピーにも関わらず秩序が生じるのは中間スケールならではの複雑姓ではないか。私たちの認知が階層構造なのは世界自体が階層構造だからではないか。身体が知覚するパターンと脳が描き出すパターンは同型で、しかもいわゆる物自体のパターンも実は同型ではないか。ーーjaw dropping
上記の鍵になりそうなのが、内部と外部を分けてエネルギーを自ら行き来させる原理。これは細胞に代表されるが、階層を変えれば臓器もそうであり、人体もそうであり…といった話に。しかもここには先日から妙に気になっていたフリストンの自由エネルギーという話が出てきて、なおさら驚いた。
まだ途中だが最大に面白いと思ったのは以下など。
《生命体が誕生して計算能力ができたのではなく、計算能力が先行して生命体が誕生したのだと(ヒダルゴは)主張する》!《複雑姓が増大する(エントロピーがなぜか減少する)のは物質、なかんずく生命体が計算能力を有するからであるという視点》!
ところで、第2部の著者は同書の企画者でもある西山圭太さんという人だが、なんと経済産業省の役人。きょうび哲学などを本気で究めようと思ったら、細る一方の大学の人文系にいるよりは、官僚になって留学とかするのが最適ルートなのかなと、そんなことも思わされている。
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(9月5日)
『相対化する知性』この本の感想も宿題になっていたが忘れたわけではない――
人工知能が「特徴量」を見出すことと、ものごとが複雑化するなかで要素に還元できないパターンが創発してくることを、同じことだと第2部の著者(西山圭太)は見ている! 先日読書メモを読み返して膝をたたいた。