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【2019 輪廻転生】

★タコの心身問題

よく寝た。

『タコの心身問題』(ピーター・ゴドフリー=スミス)を読んでいる。少し前に話題だった本。予想を超えてのめりこむ。タコは考える足である。本当にそうなのだった!

https://www.msz.co.jp/book/detail/08757/

 

「頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう」。まったくその通りだと思う。人間とは異なるが人間に匹敵する存在を、他の星の生物として長く夢想してきたし、AIの登場で思いがけず夢想でもなくなってきたわけだが、振り返るとタコがいた。

 

タコは貝と同じ軟体動物なので進化的には人間からものすごく遠い。それなのに神経や脳を独自に発達させ知能や意識みたいなものを独自に備えているかもしれない。タコであるとはどのようなことか。いくらか人間に近いサルやネコやイルカの心になってみること以上に、その想像はまるきりSFになる。

 

私たち人間の知能や意識は特別なのか。知能や意識とは宇宙において普遍性をもつのか。まったく異なる知能や意識があるとしたらいかなるものか。私たちはそれをどこまで理解したり想像したりできるのか。

 

著者の専門は「生物哲学」などとある。たしかにこの探求には、生物学の具体性と哲学の抽象性の両方が必要だ。著者の話はみごとにそれを裏切らない。私は哲学には詳しくないが生物学にはもっと詳しくない。この本で生物がじつに多彩であること、そして進化がじつに驚異的であることを、思い知る。

 

言い換えれば、地球上にこれほど多数で多様な生物が出現している事実が、どれほどすごいかを普段まるきり忘れているということだ。人間はすごいしタコもサルもイルカもミツバチもクモもすごいが、そもそも地球がすごいじゃないか。人間のみが神の祝福を受けたとはますます考えにくくなる事態。

なんじ、たこつぼに はまるなかれ。

 

それにつけても、私が本当にうすうす気づかざるをえないことを言うとーー

そのタコが死んで終わりなら、そのヒトもこの私も死んだら終わり、まったく同じであっけない、どうしようもない、ということ。べつに高度な知能や意識だからといって不死である理由にはならない。今のところは。

 

もう1つ決定的なことは進化における収斂。かくも多様に枝分かれしながら、似たような構造や機能にそれぞれ独自に行き着いているという事実。細かくは口も目も手足も神経もそうだろう。しかしより俯瞰するなら、動物は必ず食べる・必ず見る・必ず動く(などなど)

そして極めて興味深い点ーー 

生物が進化すれば、いつか必ず知能や意識が生じるように思えること。少なくとも地球の環境における動物にとっては必然だったのだろう。ではこの世界全体にとってはどうか。知能や意識は普遍の何かなのか? 身体や行動といったものと変わらぬほど普遍のものなのか?

 

※補足ないし訂正。「口も目も手足も神経も収斂だろう」と上に書いたが、本当にそう言われているのか、私は十分知らないので、正しくはご確認ください。