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【2019 輪廻転生】

日本の財政赤字をめぐる考察

<日本は財政赤字がこんなに巨額で大丈夫なのか?>

これは個人的にもかなり前から首をひねっていることで、最近だとMMT(現代貨幣理論)が出てきたり、「薔薇マーク」運動を知ったりと、また気になっているが、やっぱりそのつどわからない。

 

先日は、晴れて内閣官房参与となった高橋洋一氏の発言(以下など)をネットで視聴したのを機に、また新たに気になりだした。

https://www.youtube.com/watch?v=n1bPxAVTX6w

高橋氏の発言は毒があって面白いが、続いて視聴してみた三橋貴明氏は、さらに輪をかけて毒薬っぽく、いろいろ感じ入り、考え込むことになった。(以下など)

https://www.youtube.com/watch?v=qFphGIehVWg

一方で、たとえば、野口悠紀雄氏などは、昔から危機感を募らせている1人だと思える。

https://twitter.com/yukionoguchi10

また、藤巻健史氏などは、ツイッターで「ハイパーインフレが来る、来る」と毎日のように警告している。

https://twitter.com/fujimaki_takesi

 

そうして今回は、飯田泰之氏のnote(有料)の「日本の財政はどのように危機で,どのように危機ではないのか」(以下)に行き当たり、ようやく、なんらか簡潔に整理できた気持ちになった。

https://note.com/iida_yasuyuki/n/n71c4a63672e6

飯田氏によれば、日本の財政赤字は、まったく大丈夫でもなければ、今にも崩壊しそうでもない(その理由をさくっと説く)。また、財政とは債務だけでなく資産も合わせて見るべきで、そうすると日本の財政赤字GDP比は先進国では中程度になる(これは高橋氏などの見解と一致)

 

そんなこともあって、なんか本も読もうと思い、まず野口悠紀雄『貨幣の魔術史』、ついで飯田泰之『日本史に学ぶマネーの論理』を開いてみた。

https://www.amazon.co.jp/dp/4106038412

https://www.amazon.co.jp/dp/4569842933

 

どちらも勉強になるが、後者は特に「へ〜」ということの連続だ。

「君が持っているお金は実は政府の債務なんですよ」とか「円をみんなが大事にするのは円で税金が払えるからだ」とか言われても、「あ〜そうなんすか〜へ〜いや〜でもそれってどういうことっすか〜」となるわけだが、同書では、実際に貨幣が出現してきた経緯を眺めることで、それがぐっと実感できる。

はるか昔、白村江の戦いのあと、日本列島に強い支配体制が誕生したことは、それ自体興味深いけれど、それが貨幣の誕生と密接に結びついていたらしいなんて、まったく意識していなかった。それをこの本で知ることになり、日本の古代史が曲者だという感を、ますます強くした。

素人向けの本なので、どうせ著者は手慣れた筆で書いたのだろうと思いきや、まったくそうではなく、著者自身が書きながら貨幣の謎に向き合っている様子があり、そこが刺激的であり、かつ親近感をいだかせる。

そうして最後に著者は、《貨幣経済の中で「貨幣」を考えることには、言語によって「言語」を考えることに似た困難がある》などと述懐するので、いっそう深く感じいってしまった。

 

これをめぐっては、話は飛ぶけれども、分析哲学講義』(青山拓央)という新書で、ウィトゲンシュタインの言語観の底知れなさを、「意味の両替」などと貨幣のたとえで示していたことを思い出す。

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/20140401/p1

 

もう1つ。むかし『インターコミュニケーション』の対談で、岩井克人が次のことを言っていた。

《人間において遺伝によっては決定できないものは何か…》《その答えは、まさに言語、法、貨幣なんです。》《…個々の人間にとっては外部の存在である言語、法、貨幣――それらを媒介として、初めて人間は人間となるという認識。これは私は根源的だと思っています。》
https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/20040910/p1

 

いや、私はわりと昔から「言語ってどうなってんだろう、謎だな、ヘンだな」とずっと内心で思ったり人に言ったりしてきたのだが、ここ10年ほどは、まったく同じ根源的な関心が「進化って何だろう」そして「貨幣って何だろう」といった謎として姿を見せてきていると、自分で強く思うのだ。

言語や進化の核心。今にも見えそうで、なかなか見えない。貨幣の核心となると、それに増してまるきり見当がつかない。私の実感はそんなところ。しかし、たとえば「国債とは?」「財政とは?」さらには「金融とは?」「債務とは?」といったサブ的な理解が進むならば、ひょっとして、ひょっとして。

たとえば「糖尿病ってどんな病気」というのも、けっこう謎で難解で、しかし「インスリン分泌とは何か」さらには「インスリン抵抗性とは何か」といったサブ的なところが、面倒くさくてもわかってくると、糖尿病の核心はどうにか見えてくると思う。そのように期待して。