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【2019 輪廻転生】

松尾豊「意味理解と想像」(レクチャー)

すごく面白い! すごく新しい! すごく正しい!(たぶん) 松尾豊さんのレクチャー

"松尾豊「意味理解と想像」ー深層学習の先にあるもの – 記号推論との融合を目指して(2)"
https://youtu.be/_tnPdEZSSN4

 

「動物は、知覚と運動を通じて世界をパターンとして捉えるが、人間だけはさらに、言語記号を通じて世界をシンボルとしても捉える」

あまりに見事な整理なので、これって生物学の教科書に昔から書いてあったっけ、という気になるが、もちろん松尾さんの説。いわば「人間の標準理論」が爆誕した感。

◎その模式図

 

要するに、動物も人間も、自身の体を使って世界像を作り上げていくが、人間は、それに加えて、外部の記号も組み合わせて、世界像を作り上げていく、ということ。

このとき、身体がとらえる世界像は絡み合って連続したものだが、記号がとらえる世界はそれが解きほぐされ離散化し保存性も高まっていることが特徴だと、松尾さんは言う。ゆえに、記号を操作すれば、身体だけのシミュレーションではありえなかった縦横無尽の想像が可能だという点に、注目する。

 

さらに、この関連で出てきた次の話が、圧倒的に興味深かった。

現在私たちは記号系(言語や数式)を操作する際にシミュレーターとして3次元の知覚運動系(身体)を使うが、人工知能の記号操作では4次元や100次元も直観できるような知覚運動系を駆動させることも可能になるだろう。

そのときどんな数学や物理学が生み出されるのか、わたしは興味深い」と松尾さん。そして「いずれ、人間がやっていたことは、わずかなことでしかなかったと、わかるだろう」「人間にはとうてい考えることのできない科学技術の発明にもつながるだろう」(発言は私のメモなので正確には動画を)

 

最後のつぶやきも聞き逃がせない。「かつて人間は動物とは別の存在で敵対的にも捉えられたが、今では人間は動物の1種。それと同じで、人間的な知能と人工知能も、今は対立的に捉えられるが、実はあらゆる知能(広い意味での人工知能)の1例が人間の知能だと、考えていいだろう」(主旨)

◎その模式図

 

(9月11日)

さて、「記号系と知覚身体系の二重構造」という枠組みを、これまで私なりに考えてきた言葉で言い換えると、<動物は世界を身体によって捉えそれを自分の内部(脳)に表象している。さらに人間はその世界の表象をもういちど言語を介して自分の外部に表象している>ということになる。

◎過去の考察の1つ

 

このとき、私が最も気になっているのは、知覚運動系が作るパターンとしての世界像と、言語記号が作るシンボルとしての世界像は、形式はだいたい同じなのか、まったく異なるのか、という点が1つ。

もう1つは― 知覚運動系パターン世界像であれ、言語記号系シンボル世界像であれ、それぞれの世界像は、世界そのもの(物自体というか)と、はたして似ているのだろうか、という点。

さらに言うなら、世界の本来の存在形式などというものが、そもそもあるのか? あるとして それがパターン的であったりシンボル的であったりする可能性は高いのか? まったく思いもよらなかった新たな世界の存在形式が、人工知能によってか人間知能によってかはさておき、見いだされうるのか?