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【2019 輪廻転生】

★復興文化論/福嶋亮大

福嶋亮大『復興文化論―日本的創造の系譜』(2013)

近代以後のパートのみ読んだが、溢れるほどの説得力に驚愕。「文学は国民に何を為すのか」そんな巨大な問いの存在にを否応なく思い出した。しかしそんな問いなど不毛・不当だとの錯覚のなかで長く長く忘却していたことにも痛いほど気づいた。

だいたい本格的な批評というものを、ここ10年も20年も読んでいなかった気がする。いや、その種の著作をそもそも1つでも2つでも本格的に読んだかどうかが怪しいけれど。

すでに読んだ小説をまた読みたいという気にさせるなんて、すごい効能。まだ読んでいない小説を読まなきゃという気にさせるのは、もっとすごい効能。具体的には「それから」「斜陽」「浅草紅団」「金閣寺」「もののけ姫」「ねじまき鳥クロニクル」等々。苦い薬(批評)だけが良い薬とは限らない。

きょうび、ネット以外のものを、とくに文学なんてものを、「これはどうしても読まなきゃ!」と動機づけるものは、批評であれ何であれ、珍しいといえる。