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【2019 輪廻転生】

★誰も教えてくれなかった「死」の哲学入門/内藤理恵子

誰も教えてくれなかった「死」の哲学入門/内藤理恵子

https://www.amazon.co.jp/dp/4534057164

 

ヘーゲル弁証法をトーナメント戦にたとえていて、なるほどと思った。格闘系のゲームで相手を打ち負かすと自分と相手の両方の能力が統合されて新しい自分になるとかも。たとえがすこぶるわかりやすい!

リンキン・パーク「Good Goodbye」というビデオクリップでバスケットのゴールを競う戦いも、まさに弁証法だと書いてあり、へえと思って閲覧してみた(下)

https://www.youtube.com/watch?v=phVQZrb2AdA

最終ラウンドに出てくる超能力少女こそが「絶対精神」なのだという!

しかし、そんなヘーゲルの個人の死と生を踏み台にするような世界観に嫌気がさしたのがキルケゴールだという。この対立を「ドラえもん」にたとえる。ヘーゲルの哲学は、目標に向かって弱い自分を何度も脱していくのび太を描く。それに対して—

《もしもキルケゴールが、『ドラえもん』の世界を描くとすれば、きっと、「ありのままの」のび太を大切にしたことでしょう。のび太にとって大切なことは、弱い自分の心の葛藤に打ち克つことでも、ジャイアンに勝つことでもなく、家族・友人としてのドラえもんを心から愛すること、それだけです》p.31

 

<2月18日>

ニーチェ永遠回帰」とか「現象学のエポケー」とか、そうそう理解できるまいと思っているわけだが、瞬時に「そういうことか!」と閃きが起こる。著しく有益な一冊。(ブックオフ100円コーナーにでもありそうな体裁なのに)【本は見かけによらない!】

キリスト教は世界を直線で捉える(やがて審判のときがきて天国に行くなど)。ニーチェは、それを認めないからこそ、世界を円環で捉えたという。私たちは同じような人生をずっと繰り返す。崩壊もせず飛躍もしないこれを愛するしかないのだろう。へんな決断をせずまったり生きよ?

また、哲学の説明にサブカルチャーを参照するのが、この本の真骨頂。『2001年宇宙の旅』も『シャイニング』も『インターステラー』もニーチェの円環だとみる。そういえばたしかに『2001年』はあの曲に彩られてもいる!

ツァラトゥストラはこう語った』にはこう書かれているという。「だが俺たちは天国になんか行こうとは思わない。俺たちは大人になったんだ。——だから俺たちが望むのは地上の国なのだ」。なるほど、なるほど。

フッサールの「間主観性」とはどういうものか。死んだ身内の似顔絵を書いてもらうことや葬儀を行うことで私たちの気持ちがどう変わるかを通して説明する。これもふしぎに納得してしまった。

それと、三木聡の映画『インスタント沼』に出てきた「理想の折れ釘」が、プラトンイデアを前提にしているなんて、まさか思わなかった!