https://www.amazon.co.jp/dp/B07T825769/
正月明け郷里から帰る新幹線で、川上未映子『夏物語』を読み始める。この作家を読むのは2008年芥川賞「乳と卵」以来だが、「夏物語」も、ああ乳の話か、しかも卵の話か、と思いながら第一部終了。
というか、たしか「乳と卵」って、登場人物や全体の雰囲気が、そうこの「夏物語」っぽかったなと…
ひょっとして「夏物語」第一部は「乳と卵」の再掲だったりして? いやいや… とはいえ「乳と卵」が具体的にどんな内容だったか、もう思い出せないことに驚かざるをえない。これほどの忘却、やはり脳の障害を疑うべきか。面白さのトーンは確かに一致していると確信できるからいっそう脳は不思議。
あとから調べたら、「乳と卵」の改作ということのようだった。なるほど。
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以前、青木淳悟『匿名芸術家』にデビュー作「四十日と四十夜のメルヘン」が再掲されていたことがあったので、今回ももしやと思ったのだ。なお「四十日と四十夜のメルヘン」は「乳と卵」と違い、まるで夢の中の出来事のようで、どんな話だったかトーンしか思い出せなかったのは、まったく仕方ない。
「乳と卵」は、かつてブログに感想を少し書いていた。
https://tokyocat.hatenadiary.jp/search?q=%E4%B9%B3%E3%81%A8%E5%8D%B5
「豊胸手術のために中学生の娘も連れて上京してきた姉について、その妹が語っている」とか、ちゃんと記しているではないか!
(1月10日)
「純文学」に分類される小説には、ぱっとしなくてしかも面白くないものが多い(偏見かもしれないが)。ところがこの間やっと読んだ「むらさきのスカートの女」(今村夏子・芥川賞)は、やはりぱっとしないけれども、それにも関わらずかなり面白い小説だった。
さて「夏物語」はどうかというと、私には、ぱっとしないなんてことはなく、しかも、面白いかどうかといったら、面白すぎる小説だ。その1つは、単純だが、可笑しいのだ。町田康をホウフツさせるほど可笑しい。本を買う前はまったく予期していなかった。川上未映子ってこういう作家だったっけ?
なお町田康の面影をはっきり感じたのは第二部に入ってから。語り手の独身女性作家が人工授精で子を設けようかと思い立つ話なのだが、その独特のテーマに増して、日々の出来事がなんかハラハラドキドキ、ときにケンカ腰の台詞もあって、目が離せない。そして話の先もまったく読めない。
(1月12日)
「夏物語」。そうか、ここにやってきたのか…(今おそらくクライマックス)激しい展開の行く末に。——なお町田康テイストはだいぶ治まっているので、念のため。
小説というのは、一筆書きなのだと思わされる。ルートもゴールも見えないのに、人間の誰かがたったひとりで、とにかく一筆書きをしている。激しい感情や激しい問答の繰り返しで、ストーリーも揺れて飛んでいきそうになりつつも、筆1本を絶対に離さずインチキをせず、一筆書きをしている。