https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2019/04/30/から続く
『存在の耐えられない軽さ』読んでいる。
小説を読むのが以前に増して遅くなった私としては驚くほどのスピード。とても複雑なことが書いてあるのに、とても面白い複雑さであり、しかも、きわめて個別的で具体的かつ独創的な内容なのに、すらすら読めて普遍的な共感を呼び起こす。ナイスな小説。
なお先のエントリーに、プラハ事件に向き合った小説には思えないと書いたが、まったく間違いだった。ほどなくサビナ、そしてテレザ、それぞれの生い立ちと恋愛の事情に沿って、さらにはトマーシュの仕事の事情に沿って、全体主義(共産主義)社会の絶望的なおぞましさが明らかになってくる。
また、そうしたパートが過ぎたころ、ずっと放置されていたトマーシュのドンファン的な性愛事情の論理が、やっと追及される。そこをクンデラは、母国の特殊な現代史と同じほどに、複雑な問いと答えの連鎖によって深掘りしていくので、いったい何だこの小説はと、あきれつつ、ページを閉じられない。
タイトルでもある「存在の軽さ」というものは、ニーチェやベートーベンに絡めた深い問いとして提示される。それは1回だけの見通しのきかない人生をどう捉えればいいかという身につまされる問いだが、恋愛や肉体の軽さと重さというテーマも重なってくる。まだ先がありそうで、興味はつきない。
https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2019/05/08/000000に続く