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ここまでぼろぼろになったのは浴槽に落としたせいだが、気持ちとしてもこれくらい熟読した。
生物は岩石とは違う。さらに人間は他の生物とは違う。つまり、私たちがものごとを捉え応じるこのやり方は、山が雨に打たれるのとはどこか違い、蚊が血の匂いに寄ってくるのともどこか違う。でもどう違うんだ? そこを徹底してクリアに見極めた一冊。積年のもやもやがスカッと消えた(かも) =そもそも人間を岩石や生物などの自然物と比較するという発想、そして実際に違いおよび似ているところを説得的に見出すところがポイント=
もやもやをキーワードにするなら「表象」や「自由」といったものになる。同書はこれらを章のタイトルにして、人間の認知や行動の複雑さ精緻さを追っていく。読み通した感想を一言でいえば「私たちは奇妙ではない、私たちは健全なんだ
《本書は唯物論的・発生的・自然主義的観点からの『哲学入門』だ》と序文にある。そして参照されるのは主にミリカンやデネットといった人の考え。だから著者は、思考がクリアであるのみならず、その立脚点も隠さず潔い感じ。
反対に著者から遠いのはポストモダン現代思想の系統だろう。《私はドゥルーズがホンに苦手で、何度読んでも投本断念》とも書いている。ドゥルーズやデリダ、フーコーは、人間や世界を「健全」とはみなさず、その秩序や価値の流動性や不透明性こそを見つめている、と言えるのかもしれない。
以前この本を途中まで読んで、すでに独創的な一冊だと確信したが、タイトルが「哲学入門」ではその独創性がまったく伝わらないと思った。しかし今回通読してみると、最終的にはなぜか「生きること全体の目的など実はないのになぜそれを求める?」といった、まるで「哲学骨の髄入門」に至っていた。