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【2019 輪廻転生】

★考えない練習/小池龍之介

 考えない練習 (小学館文庫)


読んだ。

小池さんは独立系の仏教僧。NHK『ニッポンのジレンマ』で知った。

人間は考えるから偉いのではなく、《むしろ、考えるせいで、人の集中力が低下したり、イライラしたり、迷ったりしているのではないかと思っています。いわば、「思考病」とでも申せましょうか》

もう1つ刮目させられたキーワードは「飽き」。私もかねてより、人はなにごとにも飽きるな〜と思っていたのだが、「飽き」は仏教の煩悩と深く関わるという。「飽き」は心においては厄介なメインキャストということになろう。

この煩悩や飽きをめぐり、「心の中のひとりごととしての思考がぶつぶつと増殖すればするほど 心のメインメモリは無駄な雑念に食い尽くされる。見たり聞いたり触れたりしているつもりでも 実際には頭の中のノイズにメインメモリが奪われているためフレッシュな情報が入ってこない」(主旨)とある。

さらに《目の前のことに飽きて別の刺激を求めるようになる心の衝動エネルギーのことを「迷い」と呼びます》《これを続けますとと、一〇秒のうち九秒は実感が消え、六〇分のうち五四分は実感が抜け落ち》《やがて年を取ってから過去を振り返りますと、「なんだか数年があっという間に…》

ここを読んでハタと気づいた。これって、タイムラインを読むか読まないかのうちに「これじゃない、これじゃない」とどんどん次へ次へとスクロールを続ける今の私の生活のことを、まさに指しているんじゃないか。

「飽きる」とはツイッターのことだった! 

すなわち――《目の前のことに飽きて別の刺激を求めるようになる心の衝動エネルギーのことを「迷い」と呼びます》

では、そうした「思考過剰」「飽き」といった心の状態を、いかにして解除するのか。その手立てを小池さんは「話す」「聞く」などの平易な実践としてアドバイスする。

そのカンどころはいわゆる「マインドフルネス」だと思った。なんとなく期待していた通りだった(同書にこの用語は使われないが)

マインドフルネスは、瞑想のエッセンスを生かしたストレス対処法で、グーグル社なども取り入れているとかで、最近よく話題になる。

マインドフルネスの着眼点は、私たちの落ち込みや不安では、過ぎたことを悩んだり先のことを迷ったりするが、それは「頭で考えているだけで現在本当に起こってはいないよね」ということ。こうした頭の中だけの思考を避け、「いまここで起こっている五感や意識そのもの」を冷静に見つめるトレーニングを行う。

マインドフルネスのことは、数年前 仕事にからんで知り興味をもっていたのだが、小池龍之介さんの本を読んで、その姿がまたひとつはっきりしてきた。

そしてこれらはおそらく禅にも通じている。すべては初期仏教に由来するということなのだろう。(尊敬できる坊さんを知ったのは人生初かも)


◎禅に関する過去エントリー:http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20180210/p1