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【2019 輪廻転生】

総選挙、人工知能、曖昧な中間目標


投票は「せねばならない」わけでも「してはならない」わけでもなく、「してもいい」し「しなくてもいい」と思うので、都知事選は棄権したけど、今回は雨の中行ってきた。

結果の一覧をみると、たとえば比例区で、当たり前だが、自民に入れた人も、立民に入れた人も、希望に入れた人も、ほか公明、共産、維新に入れた人もいる。それがなんだか不思議な気もする。

私はどれか1つがわりと正しいと思って入れたわけで、それにもかかわらず、私がわりと正しくないと思った他のところがむしろ正しいと思った人も、それぞれにそれなりにたくさんいるのだなと思うと、自分のことも他人のことも根本的によくわからなくなるのだ。

もういっそのこと、「私がどこに入れるべきか」あるいは「政権を担うべき政党はどれか」を、人工知能に決めてもらうのがいいんだろうか。しかし、それは原理的に無理だろうと、さっき思った。なぜかというと…

――このあいだ読んだ「ボナンザ」の作者山本一成さんの本に、将棋AIボナンザは王を取るという目標が明瞭だと破格に強いが、そこに到るまでの中間目標を見定めるのは苦手でそこは人間のほうが得意らしいという知見があったことを、思い出しつつ考えるのだが――

「平和」とか「繁栄」とかいうゴールをはっきり定義すれば、人工知能はどの政党が正解かを即座に答えるのかもしれない。しかしそうしたゴールに到るための中間の目標がなかなか見えないなか、それでもそうした中間の目標はいったい何だろうと、有権者は雨の中あれこれ考えたのだ。

そして個々が暫定的に判断したそれぞれの中間目標に照らし、それぞれに政党を選んだと言えるだろう。ということは、中間目標は複数あり、いずれも決定的に正しいわけでも、決定的に間違っているわけでもないのかもしれない。だから、複数の政党がそれぞれに正解なのかもしれない。

それで私はやっぱり、とりあえず「安倍は嫌い」「小池は疫病」という考えや、「日本国憲法の崇高な理想と目的を重んじるなら、日本国憲法には改良の余地は十分にある」という考えから、中間目標を決めたように思う。

「反安倍」と言ったら言ったで、「改憲」と言ったら言ったで、「お前は小学校の低学年か!」と怒られるのだろうか。そんなことを言う人こそ幼稚園児かもしれないのに。いやもちろん、私が本当に幼稚園児か小学校の低学年なのかもしれない(せめて小学校の高学年でありたい)

しかし、幼稚園児も小学生も、有権者も、政治家も、自分が思う大きな目標に到るための、いくつかの中間目標を、ぼんやりとであっても、なんとか見出しつつ、あれこれブレンドしつつ、とにかく生きている。人間は偉い!。私も偉い。人工知能よ、きみはこの曖昧さに耐えられるか?

将棋はゴールもルールも1つしかない。しかし平和や繁栄というのは、何がゴールなのかはっきりしない。どんな盤なのか、どんな駒があるのか、手探りでやるしかない。

金正男を空港で最も効率よく殺害するには?」という問いには、人工知能は即座に解答するだろう。しかしたとえば「北朝鮮を平和にするには?」という問いならば、そもそも「北朝鮮の平和とは何か」が明瞭でないので、人工知能は原理的に解答できないだろう。

しかし、人間であれば、「北朝鮮の平和とは何か」の定義が明瞭でないにもかかわらず、そこに到るための中間目標を、とりあえず設定できる。なぜ設定できるのか不思議だが設定できる。トランプにも設定できる(はずだ)