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【2019 輪廻転生】

お金教だという


苫米地英人さんというとテレビではいかにも怪しい人だが、『宗教の秘密』といういかにもわかりやすく低俗っぽいタイトルの本があって、何気なく読んだら、実際きわめてわかりやすいうえに、内容は高尚で、宗教の核心に触れた感がありありだった。

エスユダヤ教の関係とか、ニュートンの力学は神の存在証明のために生まれたとか、ホーキングがビッグバンに創造主はいらないと書いたのはローマ法王を意識してのことだったとか、それらも面白いが、最大の読みどころは、宗教を脱したはずの現代人の多くが「お金教」に陥っているという指摘。

お金教。これまたいかにも低俗でわかりやすい表現は実に上手だと思うが、それはさておき、著者は、ドルなどの通貨の量を当局(アメリカの場合は銀行業者)が根拠もなく好き勝手に膨らませている現状こそがNGだとはっきり言う。そして通貨の量を「GDPに連動させるし」と明瞭に提案をする。

さらに著者は、銀行が保有資産を超えた額を貸し出すこと自体をNGとしているし、デリバティブなんてもってのほかという立場。私は資本主義の妙味に興味があって、そのイロハを知りたいと常々思っているが、謎の核心は貨幣そして金融にあるように感じるので、こうした簡明な主張には目をみはる。

最後には、なぜ私たちは「お金さえあればなんでもできる」「お金がなくちゃどうにもならない」という盲信に陥るのか、そこを脱するにはどうするかと問い、そこで重要なのは、実際の宗教を含めた私たちの信仰全般に横たわる「言語束縛」というものをいかに解き放つかだ、という話になる。刮目。

人類の種々の行いを、いかなる観点から探究してみても、根底にはやはり言語があるという答えに行き着くことが多いのは、じみじみと面白い。なお、言語をめぐって著者は、ある原理的なことをさくっと述べている。それはかなり独特の指摘と思われ、いつになく、はっとして、ぎょっとした。

《これまでは、物理空間にある「もの」のほうに情報(言葉)がついていると考えられてきました》《しかし、これはまったく逆なのです。物理空間にある「もの」に情報(言葉)がついているのではなく、情報空間にある「特定の情報場」の写像として、物理空間に物理的実態が存在しているのです》!

巻末などで知らされる、苫米地英人の、いかにもすごくて、いかにもあやしい、長い長い略歴は、まったく伊達ではないのだと、マジに思った。


宗教の秘密