東京永久観光

【2019 輪廻転生】

ふりつもる『東京物語』


トランプに世界は揺れ、日本発『君の名は。』も世界を揺さぶりそうな昨今。

しかし私はひとり『東京物語』をDVD鑑賞。先日の尾道行きの名残。

『サピエンス全史』は現世人類の特徴として時間の拡張を指摘するが、『東京物語』などを反復するにつけ、それを通り越しもはや「時間の永久停止」だ。

なんというか、今では私が『東京物語』を視聴するにも想起するにも、それは、昔、さらに昔、さらにさらに昔、それぞれ視聴した、そして想起した、そのつどの『東京物語』を、まとめて視聴したり想起したりする、そのような感触になるのだ。

人工知能が身体の体験を欠いた存在ならば、彼はいかなる事象を思い描くにも、すべて人工脳内のみに生じる言語などの記号によって思い描くのだろう。そうすると、人工知能にとっては、その思い描くものが、過去の事象なのか、現在の事象なのか、将来の事象なのか、区別がつかないのではないか。

人間が思い描く事象も、現在のことだけではなく、過去の回想、未来の計画、そんなことが相当多くの部分を占める。

たぶん人間の意識は太古から同じく過去現在未来を自在に行き来していただろう。ずっと人工知能っぽかったのだ。現在が太古と違うとしたら、思い描いたことがすべてログとして脳の外部に積もり消えないこともありうることだ。

このように


――ただし『東京物語』という映画自体は、いかにも静止したイメージのようで、まったくそうではない。尾道から東京そして熱海を行き来するロードムービーだし、都内でもはとバスにも乗ればあちこち泊まり歩きもする。事件も夏の数日のうちに次々と起こり、あれよあれよと危篤の電報、臨終、葬儀へと。


東京物語小津安二郎
 東京物語 [DVD]

★サピエンス全史
 サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福