東京永久観光

【2019 輪廻転生】

つぶやきの総量


鑑賞をしても感想がなかなか追いつかない状況に、いつも焦っているけれど、本当はまったく逆で、感想ばかり考えたり書いたりしているのであり、むしろもっとちゃんと鑑賞しなければならないのではないか、私は。映画に対してそうであり、生活に対してもそうなのではないか。

感想なんてまったく浮かべることなく、言うこともなく、ましてや書いたりはせず、ひたすら一生を送っている人も多いのだろうか。

だがツイッターが誕生し、一言ずつであれつぶやかれる感想の総量は破格的に増えた。つぶやく惑星。饒舌の時代。ただし個人差が大きい。年中感想しっぱなし、つぶやきっぱなしの人も多い。私の上や下に。一方、滅多につぶやかない人もいる。全くつぶやかない人は原理上タイムラインには不在だ。

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それに関連する話で――

先日『ベルリン・天使の詩』(ヴィム・ベンダース)をNHK BSでみていて、人々の内なる声が聞こえてくる天使は、ツイッターを先どりしていたのだと思った。逆に言えば、天使がいなくても、タイムラインさえあれば、君の心のつぶやきは映画みたいに明瞭に顕現される、ということだ。時代は変わった。

だけど、天使ではない人間にとっては、どのシーンもひたすら静かで密やか。天使が聞いているという人々の声が、本当につぶやかれているのか、心もとない。天使は実在するのか、誰も知らない。

ゴダールの饒舌、ヴェンダースの寡黙…

だが、この映画をみていると、少なくとも「風景は実在するんだ」と心が強くなる。……でも1980年代のベルリンは実在したけど、もうないのか……

ベルリン・天使の詩/ヴィム・ベンダース
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 ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]

・「天使が出ていくぞ」(…え、おれ?)ブルーノ・ガンツ

・図書館の老人が見ている写真集に「舞踏会へ向かう三人の農夫」(アウグスト・ザンダー)が。