東京永久観光

【2019 輪廻転生】

赤ちゃんはどうやって出来る? 言葉はどうやって出来る?


私は10歳ぐらいのころ、近所の友だちがお父さんによく似ているのを見て、待てよ、お母さんに似るのはいいけど、なぜお父さんにまで似るんだろう? と首をかしげたことがあった。「赤ちゃんがなぜ出来るか」という根本の知識がなかったせいだ。

同じく、昔の人たちは人間が猿によく似ているのを見て、なぜだろうと首をかしげたかもしれない。それはやっぱり「なぜ人間が出来たか」という根本の知識がなかったせいだろう。

同じく、意識はなぜあるのか・言葉はどうあるのかということについても、私たちが、首をひねるばかりでちっとも考えが進まないのは、意識や言葉に関する基本の何かにまだ気づいていないからではないか。あまりにも基本的で、あとから思えば ああなんでそれに気づかなかったのだ! という何かに。

ジョン・ホイーラーという人は、宇宙が理解できないのは、それがあまりに複雑だからではなく非常にシンプルだからであり、その理由が説明できたとき、それは「非常にシンプルなアイデアなので、われわれはみな、これ以外にはありえないと言い合うだろう」と言ったそうだ。

そうした非常にシンプルでしかも決定的なアイデアを、かつて見出したのがニュートンダーウィン、ということになっている。なぜ人間が猿に似ているのかがそれでわかった。なぜリンゴが落ちるのかそしてなぜ地球が太陽のまわりを回り続けているのかがそれでわかった。

それで、チョムスキーが「再帰ということが人間が言語を使えることの根本にある。同じく数を数えられることの根本にもある」みたいなことをさかんに言うとき、そうした基本の何かがおぼろげに見えてきている可能性はある。