東京永久観光

【2019 輪廻転生】

近いようで遠いパリはやっぱりけっこう近い


いま、NHK「パリ同時テロ事件の衝撃」を視聴した。今回の問題の焦点が整理され、人々の心情にも肉薄し、とても見応えがあった。しかもパリの現地から生放送。事件からたった1週間で濃い内容の1時間の番組を作り上げた日本の報道機関に、敬意と希望を感じる。

へんなことを言うが、パリのど真ん中でIS系の組織的テロが行われてしまったショックに並ぶほど、この番組の組織力・機動力は光っていた。日本の報道機関がヨーロッパや中東の情勢について深い認識をもちイスラム系を含めた社会へのきめ細かい取材網も広げていることを物語っていた。

今回の事件に対し、日本のテレビ放送は欧米や中東のテレビ放送のオールタナティブとしての役割を担えるところもあるのではないか。そしてそれは、それと同じく今回の事件に対し、日本の外交が欧米や中東とはひとつ違った役割を担える可能性の存在を、改めて思い出させる。

そして私にはフランスもシリアはなかなか遠いと思っていたけれど、今は江戸時代でもなく昭和の時代でもない。戦争も報道も、私が思い込んでいた以上に、グローバル化しネットワーク化しているのかなと思い直した。ドルや英語がとっくにそうなったように。映画や小説やアニメがそうであるように。

東京ののんき者が、「福島は近い」とばかり考えるのが錯覚かもしれないように、「パリは遠い」とばかり考えるのも錯覚かもしれないのだ。


◎番組のサイト http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20151120