新調したプリンタ複合機にOCR機能が付いていると知り、初めて使ってみた。この驚きを何にたとえようか。『薔薇の名前』で写本していた修道士がこれを見たらどんな顔をするだろう。
紙に印刷された文字は物質にすぎない。それに対し、取り込まれたテキストは、コンピュータといういわば人工知能の神経ネットワークに直結した情報である点が、決定的に異なる。
書物が人工知能に直結できるなら、いつか書物は自然知能(人間の脳)にも直結できるだろう、とそんなことを思って興奮するのかもしれない。
思考という現象において1つ1つの言語はいわば神経細胞のような基本レベルで働いている。そんな感じがする。したがって、印刷された書物は社会に様々な現象を巻き起こすが、その現象が起こるプログラムみたいなもの自体を、OCRは抽出してしまう感じがするのだ。
テキストが生じさせるあらゆる現象の基礎にある言語というニューロンもしくは遺伝子を操作するかのように。