東京永久観光

【2019 輪廻転生】

人工知能は落ち込まない?


人工知能が人間の脳を完全に模倣できたなら、そのとき人工知能も人間のごとく たとえばうつ病になりうるか。そんなことを考える。


そもそもうつ病って何だということになるが、「抑うつ気分」「興味または喜びの喪失」の2つを主症状とみるのが一般的。ではこの2つは一体どこで起こるのか。やはり脳で起こると言えそうだ。少なくとも脳なしに起こることはないだろう。

ただし問題は、人工知能に「抑うつ気分」や「興味または喜びの喪失」があるかどうか。言い換えれば、これらの症状は脳さえあれば体なしでも起こるのか。さあどうだろう。

ちなみに、うつ病の症状には「眠れない」「食欲がない」などもある。これらは体なしには起こらないだろう。つまり、人工知能が「眠れない」「食欲がない」ということはない。


こんなことを考えるベースには、「身体の不調を伴わずに起こる精神疾患は存在しない」という主旨のことをどこかで読んで非常に面白いと思ったことがある。要するに「心がつらいときは体のどこかが必ずつらいのだ」ということになる。


そうすると思い出すのは、安部公房の『第四間氷期』だ。あの小説では水中で暮らすようになった一部の人間が涙というものを退化させるが、同時に悲しいという感情も失ってしまうという設定だったと記憶する。


というわけで、単純な推論になるが、うつ病が体の不調なしには起こらないのであれば、人工知能うつ病にならないだろう。さらには、人間も脳だけを何らかの方法でそっくり電算化できたあかつきには、人間ももううつ病にはならない。落ち込んでつらいという状態から完全に解放される!


そういえば、このあいだ映画『2001年 宇宙の旅』のDVDを見たのだった。上記の推論に反し、HALはけっこう悩み多き人工知能だったようにも受け取れる。どうなんだろう……。あるいは、新しい人類となったスターチャイルドは、もはや抑うつ気分にさいなまれたりはしないのか?


★第四間氷期安部公房
 第四間氷期 (新潮文庫)
 
2001年宇宙の旅スタンリー・キューブリック
 2001年宇宙の旅 [Blu-ray]