東京永久観光

【2019 輪廻転生】

ドーハの喜劇


今回の旅行はカタール航空を利用した。羽田からの便がちょうど就航を始めたばかりだった。ただルーマニアに向かうには南にぐっと大回りをするので、時間は相当かかった。とはいえ、いろいろ面白いことがあった。

帰国便はルーマニア→ドーハ→羽田の乗り継ぎだが、ドーハ空港での待ち時間がとても長く、これは疲れるなと思っていたところに、驚きの情報が耳に入った。カタール航空の乗客がドーハの乗り継ぎで8時間以上を要する場合は、なんと市内のホテルへの宿泊サービスがあるというではないか。

そんなうまい話があるものかと半分以上疑っていたが、事実だった! トランジットに進む直前に専用カウンターがあり、そこに並ぶと、「はいはい宿泊ですね」と言わんばかりにホテルが割り当てられる。あとは流れ作業のごとく入国。ホテルに向かう車もすぐにやってくる仕組みだ。アラブのプチ王様になったのか、私は。

高速道路を通ってホテルまでは20分程度。建物はありふれていたが部屋に入ると素晴らしい。ルーマニアで泊まったどのホテルより豪華だった。深夜から早朝までの短時間だが、バスタブに入り一眠りし食べ放題のブレックファストまであった。


これまで中央アジアパキスタンなどのイスラム圏は旅行したことがあるが、アラブの国は私は初めて。明け方空港に向かうとき、登ってきた太陽が砂のせいか霞んでいるのが印象的だった。

ドーハ空港では入国審査官などがそろって民族服を着用していた。真っ白な服と被り物そしてきれいな素足に革のサンダル。ドラマを見ているかのようだった。日本なら和服にチョンマゲという感じか。しかもみんなスマートフォンを当たり前のごとく操っている。

さて、そのドーハを早朝に発った羽田便は、到着が深夜になるせいかガラガラ。座席3つを使って寝そべる人も多数いるくらいで、楽々のフライトだった。途中チベットやヒマラヤの上空を通過するのだが、私は空いている窓側の席に移動し、真っ白な山々を心ゆくまで眺めることができた。


もう1つおまけに。深夜の羽田から帰宅できない人は、近くの天然温泉平和島という施設を無料で利用できる。バスの送迎あり朝食ありだ。これもカタール航空の太っ腹サービス。(私はモノレールと電車で帰れたので利用せず)

それにしても、ただのエコノミー客がこれだけ手厚く扱ってもらえるのは、ひとえにカタールという国が原油生産の恩恵で極めてリッチだからだろう。それはなにか公平さという点で大きく間違っている気もする。が、貧乏な人と金持ちの人が一緒にいる国は革命を起こして壊してしまわねばならないとまでは言えないのならば、貧乏な国と金持ちの国が一緒にある世界もまた革命を起こして壊してしまわねばならないとまでは言えないのであろうか? ……こんど平和島の天然温泉にでもつかりながら、ゆっくり考えよう。


ちなみにこちらはルーマニアの首都ブカレストでチャウシャスクが住んでいた巨大な建物。

ルーマニアは王国の歴史がほとんどないため王宮などもないのだが、おかしなことに、革命によって人民の共和国が樹立されて初めて、大統領がまるで皇帝のごとき贅沢三昧をしたというわけだ。20世紀の喜劇というべきか。(ともあれ、前にも言ったが、私たちの多くは共産主義革命政権を倒すほうの革命しか目撃したことがないとは、これいかに)