東京永久観光

【2019 輪廻転生】

丸の内永久観光

有楽町に用があり、そのあと天気も良かったので、丸の内・大手町から皇居の方へ。

高層ビルはさらに増え、内堀では緑と八重桜が美しい。オフィスの勤め人が早めの昼飯に連れ立って出てきている。新宿の電気店などにいると日本に来る外国人は中国人だけなのかと錯覚するが、そうではないと安心する。

そのまま北の丸を通って半蔵門までぶらぶら。

もう昔だがバンコクプノンペンで王宮を見に行ったことを思い出した。海外旅行するとつい王宮など観光するもので、そのままビジネス街にも出くわすが、東京見物でも同じなのだ。

それにしてもこの界隈、経済・文化・自然のいずれをとっても高級かつ上品であることを痛感する。言い換えれば、私たちの国のリソースの相当多くがここには惜しげもなく割かれている。

久しぶりにここに来たのは、友達の家を訪ね、庭で採れたキャベツとお堀で釣った魚でご飯を食べさせてもらうためで……というのは嘘で、仕事がらみだ。いや私でなくてもここに友達を尋ねて来る人などいない。右を見ても左を見ても住宅なんてないのだから(たった1つはあるが)。内堀をぐるりと囲んでいるのは、会社と役所の事務労動のために専有され管理される巨大建築物ばかりだ。

そうだ、この界隈、いっそ住宅地にしたらどうだ、思い切って。広々したオフィスと広々した街路のすべてを、人が生活するためのインフラに切り替えるのだ。これまで日本国のリソースをほとんど分けてもらえずにいた家のない人たちや生活保護とやらで肩身の狭い暮らしをしていた人たちに、まず優先して入ってもらえばいい。あるいは国民等しく抽選をして1年くらいずつ交代で住むような共有の町を作っていく、なんてのもいいんじゃないか。

このような一等インフラストラクチャーを自らの業務にしか活かそうとしない会社と役所は、まとめてどこか移動してもらおう。なんだったら福島。……いやいや、それどころか、原発事故でがらがらになった土地には、日本は今こそ「遷都」すべきなのだ。なんと賢明な政策。

かなり本気でそう思う。お金は日銀がこれから2年間巨額の円をばらまく予定なのだから、ちょうど良いタイミングだね。

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さて、散歩はさらにグレートになり新宿まで歩いてしまった。

そういえば、宇野常寛は最近東京をよく歩くらしい。ダ・ヴィンチに書いている。この都市の地理感覚は電車路線によって作られているが、実際に歩くと意外なつながり方をしている、そのことを首都圏の人々は帰宅困難で非日常のルートを歩くことになった3月11日にそろって実感した、という趣旨。そこからフジテレビのドラマ『最高の離婚』の評になる。

(続く)