先日の旅行は香港経由で、久しぶりにというか性懲りもなくというか重慶大廈(チョンキンマンション)に泊まり、そのせいかふと、映画『恋する惑星』(重慶森林・Chungking Express)が見たくなり、借りてきた。
重慶大廈は改装され小奇麗になっていたが、宿の部屋の極端な狭さは相変わらずで、これはやはり世界一ではなかろうか。香港は東京を超えて「狭い」都市だ。街も狭くてそこを二階建てバスがきちきちに走る。
そして『恋する惑星』も、とにかく狭さが目についた。トニー・レオンが住んでいる部屋も狭い。ウォン・カーウァイはあのような手持ちカメラをいやでも振り回さなければ、香港の実生活は撮影できなかったのだ! まあそれ以上にトニー・レオンもフェイ・ウォンも、とにかく若さが目について懐かしかったけれども。1994年制作。
(ただ、ホウ・シャオシェンは『珈琲時光』で一青窈が住む設定の東京のアパートを撮影したとき「あまりに狭くて大変だった」みたいなことを言っていたと記憶する)
(同じくこちらをみても東京は世界に冠たる狭さだ→http://www.youtube.com/watch?v=t4L6A1wpzY8)
久しぶりの香港でもうひとつ印象に残ったのは、やっぱり夜のめし食いどころの雑然とした勢いか。『恋する惑星』では屋台でトニー・レオンが炒飯かなにかをかきこむシーンがあった。もったいぶらない速さもまた香港のチャームなのかも。
(そんなことを思いつつ、『恋する惑星』と一緒に借りて見たのが『再会の食卓』という中国映画で、感じ入るところの多い一作でおすすめだが、料理を作ったり食べたりするシーンが多いのも面白かった)
ところで、『恋する惑星』は香港の若者がなんとなくアメリカ(カリフォルニア)に憧れたりしていたところが切り取られてもいたようで、それは、日本の若者がなんとなくアメリカに憧れたりしていたところが切り取られてもいた『風の歌を聴け』(村上春樹)にも似ている。実際、『恋する惑星』がストーリーを登場人物の独白で綴っていく感触は、とても村上春樹っぽいと感じた。
焦点の定まらない旅行だったが、『恋する惑星』もなんだか焦点が定まらない映画のようでもある。焦点の定まった旅行や映画が必ずしも偉いというわけではないけれど。
(おもえば常に食事も焦点は定まらず、いつも早飯)
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