★ツィゴイネルワイゼン/鈴木清順(1980)
自分の趣味で100パーセントやりたいことをやります。そんな映画監督は少なくはないのかもしれないが、やっぱり鈴木清順という人が真っ先に思い浮かぶ。しかも、やりぬく気概がどうのというより、追い求める世界の特異さのほうが、どうしたってあまりに際立っているというべきだ。
原田芳雄・大谷直子・大楠道代らのおかしな振る舞いが、全編を妖しくねじ曲げていく。ただふしぎなことに、彼らに翻弄され狼狽するばかりの藤田敏八の表情のほうが、それ以上にしみじみと印象に残る。(あの表情には、何年か後の伊丹十三『タンポポ』でまた出会うことになる)
日活を解雇された鈴木監督が10年余りのブランクを経て取り組んだ一作だったこと。ドーム型の特設劇場で上映されたこと。映画史的にも重要なのだろう。しかし、毎度いきなりのめりこんでしまう画面の中で、そんな周辺事情はまったくどうでもいいことに思える。
ウナギ、蕎麦、牛鍋と飲み食いするシーンがとても多い。どれも見ていて気持ちがよくて仕方ない。意味を考えずとも何をしているかが自明のシーンだからだろうか。そうしてやがて、意味を考えたいシーンのほうも、考えるのをやめ、ただ展開に任せて眺めるようになると、本当にことごとく気持ちがよくて仕方のない映画鑑賞になる。
内田百間の小説がモチーフであり、いっそう親しみを覚える。「サラサーテの盤」がクレジットされ、別の小説「山高帽子」のエピソードも盛り込まれている。『ツィゴイネルワイゼン』は案外 筋の通った話だと思うが、百間の原作は、私には何度読んでも理屈による収まりが悪く感覚で味わうしかない。だから本当に謎なのは原作のほう。
もっといろいろ書きたいが、今回はこれくらいで。
◎参考:http://www011.upp.so-net.ne.jp/aunt/cinema-4.html
《鈴木清順は「今度の映画は、生きている人間は本当は死んでいて、死んでいる人が本当は生きているんだ。という一種の怪談ですね。 情念や因縁は何ひとつない、現代風のノッペラボウな怪談を、やさしく、面白く、極彩色の娯楽映画に仕上げてみるつもりなんです」と制作に先んじて語っている》 この監督のコメントはDVDの付録にも引用されていた。
◎『サラサーテの盤』
ところで、サカナクションのPVが『ツィゴイネルワイゼン』ぽい。http://t.co/wFu3IxT3
★帰らざる日々/藤田敏八(1978)
もちろん藤田敏八監督は70年日本映画の代名詞的な存在。この一作は同時代に見たのでひたすら懐かしい。意外に真面目な青春物語であることも好感。が、それ以上の熱い感動には至らず。
それにしても、竹田かほりとか今どうしているのだろう。え? 甲斐よしひろと結婚したんだっけ? テレビドラマ『探偵物語』は1979年〜1980年か…(以上 wikipedia)
★北京の自転車/王小帥 ワン・シャオシュアイ (2000)
很好 (ヘンハオ)=Very good ! こういう映画が好きな自分が好きだ。
★白いリボン/ミヒャエル・ハネケ(2009)
不気味。そういえば、日本の戦前をこうした切り口(ファシズムの予感?)で静かに見つめたような映画は、なかっただろうか? そもそもまったく異なる種類の社会だったのか? カンヌのパルムドール。
★夜叉/降旗康男(1985)
これはもう田中裕子の映画と言いたい。高倉健、ビートたけしの共演も見どころだし、いしだあゆみ、大滝秀治と他の出演者も多彩なのだが。福井県美浜町ロケ。
★春との旅/小林政弘(2010)
黙して語るような場面場面を固唾をのんで見守った。みすぼらしく年を重ねるばかりの普通の人や普通の町。胸を痛く打つ。ところが、付録のメイキングで監督が女優の「根性をたたき直してやった」みたいな信念をいだいているらしいことがわかり、どうもそういうのが苦手なので不快になった。そう思うと、登場人物たちの関係は結局何も解決せず、爺さんが死んだから片付いたようにみえるだけじゃないか、という気がしてきた。
★ロッキー/ジョン・G・アヴィルドセン(1976)
無名の貧乏役者だったスタローンが一念発起して書き上げた脚本がもののみごとに当たったのが『ロッキー』だったそうだ。映画の物語以上にこの映画の誕生こそがアメリカンドリームだったわけだ。それを私は、町山智浩 『映画の見方がわかる本』 を読んで今さら知った。そんなことがあってDVDを借りた。スタローンという奴のことを25年間誤解していたかもしれない。(追記:35年間のまちがい。……35年って!?)
★飢餓海峡/内田吐夢(1965)
面白い! 『砂の器』を超えるほど面白い! (これは初視聴)
★忍ぶ川/熊井啓(1972)
白黒の東京や東北の光景は心にしみたが、主人公の文学青年的自意識過剰がどうも好ましくなかった。
★ショコラ/ラッセ・ハルストレム(2000)
チョコレートのマジックといったことや母と子の宿命みたいな設定が、リアルであるよりはおとぎ話に感じられてしまった。ジョニー・デップのロマも小ぎれいすぎないだろうか。同監督は『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』や『サイダーハウス・ルール』のほうがよい。
★サイン/M・ナイト・シャマラン(2002年)
世界三大がっかり映画?
◎映画DVD鑑賞記録 2011年(2) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20110723/p1
◎映画DVD鑑賞記録 2011年(4) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20111216/p1