東京永久観光

【2019 輪廻転生】

観光論的、買い物的


思想地図β vol.1


思想地図βが届いた。

東浩紀はまずどんなメッセージを発しているだろうと思い、創刊の辞をまず読む。そうしたらなんと、シンガポールへの「観光旅行」をめぐって書いているではないか!

東さん一家は、ホーカーズと呼ばれる「本物の屋台」と、そしてショッピングモールにある「偽物の屋台」の両方を訪ねたという。そこで不可思議な現象に出会う。

本物の屋台が観光客ばっかりだったのに対し、偽物の屋台はどうだったか。


《なるほど、この屋台村は確かに偽物だ。スコールも降らないし生ゴミの匂いもしない。しかしそこには現実の客がいる。現実の屋台村にはいなかった学生やカップルや家族連れで賑わっている。狭いベンチに身を寄せ合って座り、サテーを咥えバクテーを頬ばりラクサを啜っている人々がいる。たとえ環境がすべて偽物にすぎなかったとしても、その人いきれと喧噪は紛れもない本物だ。だとすれば、むしろこのシミュラークルこそが本物なのではないか》


私は現代思想をあまり知らないけれど、観光旅行はとても好きなので、こうした出来事なら身にしみてわかる。そして、こうした出来事こそ、20世紀から21世紀に移動してきたなかで、私たちの土台にあったはずの何かの底がいよいよ抜けてしまった、そんな状況を最もうまく表しているんじゃ? …と激しく共感した。

私「みなさん、回っているのは、太陽ではなく地球ですよ」(…でも、やっぱり、太陽のほうが回っているのかもしれないけど…)


これに先立ち、東浩紀シンガポールの快適にして安っぽく月並みな海岸リゾートで、もう一つ衝撃的な発見をしている。


《子どもたちがみなクロックスを履いている》


…! …!! …!!!

ああ世界って今ほんとうはこうだよ!!!!

クロックス的転回。


《ショッピングは歴史と文化の差異を均し、いままでの本物を偽物に変え、偽物を本物に変える。たとえモールが排除とセキュリティの論理のうえに作られた虚構であったとしても、ぼくたちの現実はすでにその虚構のうえで動いている》


これが浅田彰さんならこんなシンガポールなんて観光せず、フランスとかイタリアとかの正真正銘の世界遺産をめぐって書いたかもね。