東京永久観光

【2019 輪廻転生】

2009年3月・4月の読書本


今年から読んだ本は月ごとにまとめておこうと思い立ったから、一応(4月は忙しかったので3月分と一緒)。ともあれこうして出しておかないと、便秘が何か月も続くみたいで体調が狂うのだ。


ミサキラヂオ/瀬川深早川書房 想像力の文学 第1回配本) asin:415209012X
本を開くと手描きの地図が載っている。岬の先端に広がる架空の町。もうそれだけでまさに想像力の花がぱっと開く。『旅行人』(バックパッカー向け雑誌)に載っているような地図だから、まるで初めての土地をこの地図だけを頼りにこれから散歩しようという気分。そしてまた、小さい頃はこうした一つの世界を一人で空想するのが好きだったようなことも思い出した。多数の登場人物がそれぞれ個性的に描写され多数の絡み合いのなかにストーリーが展開していく。とにかく楽しい読書だった(といいつつ、実はまだ終章「冬」を読み終えていない)。純文学と大衆小説の区別があるなら、これはいわゆる中間小説に当たるか。


のうだま―やる気の秘密/上大岡 トメ・池谷 裕二 asin:4344015959
すべて試してダメだった人、ぜひこれを。
http://www.1101.com/dark_continent/index.html


資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす/竹森俊平 asin:4532353262
あるブログが推薦していたので読んでみた。アメリカのサブプライムローンとそれを元にした金融商品とはどういうものだったのか、またその崩壊とはどういうことだったのか。週刊子どもニュースくらいよく、そしてそれより少し詳しくわかった(2008年リーマンショック以前に書かれているのだが)。さらにこの本は「経済成長とは何か」、そこにおける「バブルとは何か」を解説する。そこが本筋か。公的年金制度とはいわばねずみ講であり住宅バブルによる投資目的の住宅が住まれることもなく次々に転売されていくのもねずみ講、アジア通貨没落に懲りたアジア新興国がそのあと投資より貯蓄に励んだためにアジアなどの後進国新興国)の余ったお金をアメリカなどの先進国こそが借りて使うという状況が訪れた、といった話も。もっとじっくり読み込むべきところだが、終了。小見出しで整理されていないのが辛いが、とても勉強になった。ところで私はシフォン主義はもちろん好きだが、資本主義はなお微妙。


新世紀メディア論―新聞・雑誌が死ぬ前に/小林弘人 asin:4862381294
ごぞんじ『WIRED』そして『サイゾー』の小林弘人。この人の言うことは信用できると思い、買った。挑発的である以上にけっこう真面目に丁寧にいろいろ説いて(解いて)くれる。


赤い館の秘密/A.A.ミルン創元推理文庫) asin:4488116019
推理小説の古典的名作。中学か高校で読んだのだが、先日「ミステリーベストテン」的な雑誌を手にしてこの書名を見たら、とても懐かしくなって。少年期や青年期に全身で味わった小説を年をとって読み返すというのは、まさにタイムスリップでありまことにアメイジングだ(しかしそれゆえ、若い頃にしっかり小説を読んでいないとそれはかなわぬわけだ。少年よ、小説を読め)。ちなみに『黄色い部屋の謎』はもうすでに何度もタイムスリップしている。


言語と思考を生む脳/入來篤史東京大学出版会 シリーズ脳科学3) asin:4130643037
私が今最も知りたいことに焦点をあて、そして、答えてくれているという印象。理化学研究所 入來篤史さんの編著。以前読んだ『脳研究の最前線』で「世界の捉え方が自動詞的から他動詞的へと進化したのが霊長類」という極めて刮目すべき見方を知ったが、それが本格的に展開されている。岩波の雑誌『科学』2004年7月号の「言語の起源」からつながる読書でもある。こうしたテーマをめぐって得たものについてはいずれしっかりまとめたいが、この1冊はたぶん決定的な役割を担うとおもう。
 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20080518#p1(脳研究の最前線)
 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090115#p1(雑誌『科学』2004年7月号)
 → その後 http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090613#p1「言語大陸横断鉄道」
  

言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか/酒井邦嘉 asin:4121016475
上記関連で再読。この一冊もじつに多様で深い内容が盛り込まれている。全体の中身はさておくが、個人的には、同書が触れている『チョムスキー階層」というのが、前に読んだ時もよく分からずしかし気になって仕方なかったのだが、今回もそうだった。ヒトの自然言語は、コンピュータ言語などと比べれば冗長であり曖昧であり、それゆえの限界も可能性をももつのだろうが、その核心を知る手がかりがここにあるように思うのだ。Wikiをみても難解。
◎参照 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E9%9A%8E%E5%B1%A4


40年前の東京―昭和38年から昭和41年 春日昌昭のトウキョウ(写真集) asin:4861262739


東京大学アルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・キーワード編/菊地成孔大谷能生
 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090325#p1


東京大学アルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編/菊地成孔大谷能生
これも少し読んだ。


不可能性の時代/大澤真幸 asin:4004311225
読みにくいが捨てがたいのでいつまでも引っ張る(もうさすがにやめた)。爆弾戦争を行う原理主義者の心理をとても知りたいと思っているのだが、この本はそれについても一つの解答を示している。
 ◎以前 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090228#p1


鬼が撮った日本/土門拳(別冊太陽) asin:4582945201


道草/夏目漱石 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090316#p1


囚人のジレンマリチャード・パワーズ
 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090328#p1
 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090401#p1


贈与論/マルセル・モース → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090310#p1


考えるヒント/小林秀雄 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20090411#p1