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【2019 輪廻転生】

日本の明日を占う数値(当たるも八卦)


日銀の首脳陣ってのは毎日何をしてるんだろう。そんな素朴な疑問は昔からあった。入力すべき情報がいかに複雑難解であれ、出力はたった一つの数値でよいのだから、われわれの誰よりも簡単な仕事ではないか。

「いよいよ−0.25ですか」「いやあ今回はまだ−0.2ですなあ」「そうしますか」「そうしましょう」「では本日はお開きということで」「向かいに蕎麦屋が出来ましたね」「行きますか」

以上は私の妄想だが、高橋洋一この金融政策が日本経済を救う』(ASIN:4334034845)も、日銀なんてのは物価のサーモスタットみたいなものだという。昨年の日銀総裁人事迷走をめぐってこう書いている。

重要なのは「何をやるか」を先に決めることです。極端にいえば、「何をやるか」が決まっていれば、正直だれがなっても構わない。なぜなら、サーモスタットのスイッチ係のようなものだから(笑)。言い出しっぺは私ではないですよ。プリンストン大学では皆そういっていました》p.99

かつて「インフレ=悪」としか実感できなかった昭和出身者の私も、ここ数年の経済議論ブームのおかげで、そうではないらしいことがやっと分かってきた。そうした基礎を踏まえつつ、金融というセクターの根源性・重要性を説いているのが、この一冊。要するに「金利が下がる→世の中にお金の量が増える→景気がよくなる→みんな幸せ」。そんな簡単な話なのかというと、どうやらそんな簡単な話らしい。「食べれば→太る」くらいの。

たしかに自分の財布にお金があふれていれば余計な物もつい買ってしまう。経済全体も似たようなものということだ。ただ、私の財布はお金を使えばその分軽くなる。ところが、国の財布や世界の財布はお金を使えば使うほどかえって膨らんでくるみたいなところがある。そこが不思議な打ち出の小槌。しかしそうするとまた分からなくなる。ドルや円はどんどん増やしてオッケーなのに、かの「円天」のほうは増えてもみんなが幸せにならないのは何故なんだ?

ネットの各所で評判だったので読んでみた一冊。

本は全部読んだほうがもちろんいいが、全部読まなくてもべつにいい。少しでも読めば中身のことが少しでも分かる。ところが、完全に読まねばというプレッシャーのせいで結局まったく読まないということがある。それと同じく、読んだ本についても、完全な紹介を書きたいと思うあまり、結局なにも書かなかったということがよくある。それは誰の得にもならない。というわけで、ほんの少しの部分についてのほんの少しの感想。



関連:日本経済と私(http://www.mayq.net/nihonkeizai.html
関連:『クルーグマン教授の経済入門』(http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20030912#p1
関連:『経済学思考の技術』(http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20041007#p1