東京永久観光

【2019 輪廻転生】

最近みた映画(DVD)またひとつ


茶の味asin:B0001X9D8Q

ラストの、爺さん(我修院達也)が黙ってスケッチブックに家族一人一人の様子を描いていた絵が、じつはそれぞれなんとパラパラアニメになっていた! というところでは、ちょっと他の映画はもちろん他のさまざまな表現まで範囲を広げても、なかなかないようなたぐいの感動を味わうことになった。

役者もみな好かった。主役的な兄妹のどちらもよいが、特に兄のくだりでは、あこがれの転校生、土屋アンナ囲碁に入るという意外性が面白いうえに、その部室でついに二人が対局する雨の一日など、特に好かった。

一家の父親役が三浦友和。しかしこのところ三浦友和を映画でよく見る。どれも印象的。この前の『転々』(http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20080905#p1)がそうだったし、だいぶ前に見た『松ヶ根乱射事件』でも、最初三浦と気づかないような困った男の役をやっていた。おなじみ『ALWAYS 三丁目の夕日』でも、三浦が空襲で亡くした娘と夢のなかで再会するエピソードだけは、他のエピソードとちがい回復しようのない切なさがあった。なお、三浦のこの性格俳優的な系譜は、ひょっとして1985年『台風クラブ』が原点だったのだろうか。このあいだその『台風クラブ』をこれもDVDで見直して、そう気づいた。それより前の山口百恵との共演映画になると、私は『絶唱』と『潮騒』くらいを最近になって見た程度だが、そうした好演技の記憶は残っていない。(だが、『台風クラブ』についても、このあいだ見直すまで三浦が出演していたことも忘れていたので、実際はどうか分からない)

ただ、上の書いたことのすべてと比べても、浅野忠信が中島朋子に会いに行ったシーンがなにしろ最も身にしみた。浅野はずっと若いころ中島にふられたらしいのだが、その中島が結婚すると聞いてわざわざ東京から郷里に帰ってきたという設定のようだ。浅野はある朝ようやく意を決して中島の実家まで歩いていく。突然姿を見せた浅野に中島は驚く。二人きりのその会話。互いを気遣ってとてもぎこちない。「元気?」とかなんとか。当たりさわりのない言葉だけをつなぎ、気持ちを探り当てようとする。映画全体ではほんの一つの挿話だが、忘れ難いものになった。(というか、この映画は、主軸がはっきりせず、挿話の連続で出来ているとも言える。そもそも映画でも小説でも人生でも、ばらばらの挿話のただの集積であっていけないわけではない)

監督は石井克人。どういう人だっけと思ったら、かつて『鮫肌男と桃尻女』を作った人だった。それだからこその我修院達也であり、浅野忠信であり、寺島進であるのだろう。なお、『鮫肌男と桃尻女』では寺島進が神のお導きに目覚める的なシーンがあり、私はそれを最も強く覚えているのだが、それをふまえると、やっぱり『茶の味』もどこかそうした、内的世界への扉がやがて開かれるといった主題は、見え隠れするように思う。

あの春野家は、なんとオープンセットだった!
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=4505


 *


(言い訳、良い訳) まいど新作映画でもなく新作DVDですらないものを、なんとなく見て感想を書いても、一般的には価値がないだろうが、同じものを見て「いい」と思った人は、それについて他の人の書いたものは、いつであっても読みたいっすよね。少なくとも私はそう思う。はてなのリンクなど互いにたどって・・・。