東京永久観光

【2019 輪廻転生】

渋谷タイ化計画


我がソウルフードは寿司があらまほしき・・・的なことをこのあいだ書いたけれど、ちょっと撤回。私は本当はタイ料理が最も好きなのではないだろうか。

渋谷道玄坂に「チャオタイ」という店がある。東口にもあるらしい。http://www.chaothai.jp/

昨夜、シーフードと野菜のバジル炒め+目玉焼きを載せたライスが一緒に盛られた一品を食したところ、あまりにうまかったので、今夜もとうとうまた入ってしまったのだ。週末とあってごった返していたが、良い席に案内してもらえた。昨日の感動さめやらず、やはりシーフードと野菜を今度はオイスターソース炒めにした同種の一品を頼んだ。こちらも甲乙つけがたくうまい。食べ終えてもう腹は十分だったのに、舌がこのうまさをもっと持続したいと言ってきかず、よしわかったと意を決し、パットタイ(甘めのソース風で味付けしたビーフンの焼きそば)を追加してしまった。

タイには当たり前のように旅行に行くが、タイという国に関して私は申し訳ないほど何も知らない。前も書いたように、そもそもタイという国が存在することすらふだんは意識せず仕事や生活をしている(アメリカ人がごくふつうにトヨタの車に乗ったりパナソニックのテレビを買ったりしていても、日本という国自体にはほとんど知識も興味もないことが多いと言われるのと似ている)。

ただ、タイといえばメシがうまい。それは確かだと思われるし、こうしてタイのメシを食べるとき、私の世界の中でタイは確固たる実在となる。

1年間で我々は何食食べるのか。1000食くらいとしよう。ではその国籍別内訳を考える。私の場合、日本食300、中国食150、インド食(つまりカレー)150、欧米食(パン系)200、その他200といったところだ。その他のなかにイタリア食、韓国食、メキシコ食、そしてタイ食などがあるわけだが、今の気持ちとしては、タイが中国やインドを超えるくらいでもいい。

渋谷でタイ料理が食べられる所は他にいくつもあり、「チャオタイ」の少し先にある「サワディー」やセンター街の「アジアの味」(タイを含めた東南アジア料理)は私も入ったことがある。これらの店も問題なくうまい。先日書いた東急ハンズそばの「パラダイス マカオ」にもタイ料理がある。

いずれも1食だいたい1000円弱だ。現代日本の繁華街やビジネス街では毎日の飯にせいぜいこれくらい出費できれば十分満足で豊かな気持ちになれるのだから、人間なんて正直だ。あなたの昼飯の予算は500円ですか、1000円ですか、最高ですか〜(渋谷スクランブル交差点にて)。そういう些末な差が、じつは人生というものを享受できるか否かの重大な分かれ目となってしまうのではないか。

そういえば、所得の多い人は概して所得の少ない人より忙しいものだ、という記事があった。たしかにそうだろうと思う。

本当は、たっぷり金があってそこそこ暇もあるとか、たっぷり暇があってそこそこ金もあるとか、それくらいがよい(いやもちろん、暇も金もたっぷりあるほうがいいに決まってるが)。でもこの社会はどうもそういう選択肢はあまり用意してくれない。というか、たいていの人は、心や体をこわすほどたっぷり忙しくてけっこう金があるか、心や体をこわすほどたっぷり忙しくてぜんぜん金がないか、どちらかしかないようにみえる。

というわけで、そこそこ暇な人向け限定情報。うまいタイ飯を思うまま食いたいなら、そこそこ休みをとってバンコクへ行ってしまうのが一番よい。今もし3食外食で1日2千円くらい使っているなら、その2千円で毎日安宿に泊まり飯もしっかり食えるだろう。2年前タイ旅行を3週間ほど実践してそう思った次第。

もちろん、渋谷のタイ料理店で使う1000円をそのままバンコクの庶民食堂でぱっと使い、「広い地球じゃ俺だって勝ち組さ!」気分を味わうのもよろしい。でも実際は人が違ったように倹約してしまうのが、格安旅行者のサガというものである。

それで思い出した。格安旅行の実践報告ライターとして知られる下川裕治が『日本を降りる若者たち』というのを講談社現代新書から出した。日本を降りてどうするのかというと、もちろんタイでぶらぶらするのである。やはりどこか他人事に思えず興味深く読んだ。asin:4062879174

そしてもし、昼飯500円を1000円にするためには心や体をこわしてまで働かねばならないのがこの国ならば、日本を降りるという選択肢は十分アリだと、私はおもう。もちろん日本を降りてタイに行って心や体をこわす可能性だって少なくはないのだとしても。


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