東京永久観光

【2019 輪廻転生】

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寿司屋の回転率…といっても、マクドナルド椅子的に客をどれだけ速く出し入れできるかの値ではなく、ある個人が生涯に寿司屋を訪れた回数のうちその寿司がカウンターで回転していた割合をいう。私の場合ナイスミドルになって以降むしろ上昇傾向にあり、対策に頭を悩ませる日々だったが、ここ数ヶ月は回転率が減少している。そのかわり、立ち食いである。

というわけで、渋谷「魚がし日本一」。センター街の喧噪を避けつつ本日もふらりと立ち寄った。狭い店内だが味も店員もけっこう上品で意外に落ち着ける。なによりこの平成格安人生期にあって寿司が回らないというのは、逆コペルニクス的転回とも言えよう。はまち、中とろ、えび、あぶりトロ、あじ。笹の緑におかれた小振りな一口。炙りのあのガスの音、色、香りも不思議にくせになる。

寿司には立ち食いがよく似合う。スローフード信仰から食の自由を!

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ソウルフードという用語があり、自分にとっては何だろうとたまに考える。日本の私なら寿司がそうでありたいが、回転率93%ではなかなかそんなことを口にできない。と思っていたのだけれど、まあしかし寿司はうまい。

そういえば、このあいだ見目うるわしい国立新美術館を見学し、東京ミッドタウン界隈も歩いたのだが、なんというか新築無臭の美化された街の出現であり、調子に乗るなよと言いたくなった。だいぶ昔に釜ヶ崎を初めて見たとき「これが日本か」と思ったが、今や反対の意味で「これが同じ日本か、同じ東京か」だ。SF的にいちど住人をそっくり入れ替えてみたらどうだ。そしてその日は六本木駅前にあった非回転系寿司屋にも入ったのだ。すると、夫退職金&年金リッチ風に着飾ったマダム連中が、私の3倍速でネタを注文しており、なかなか心温まらない光景だった。