東京永久観光

【2019 輪廻転生】

人生、携帯

ジャ・ジャンクー『長江哀歌』についての続き。
http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20080119#p1

トランプや裸男やタバコや口論の光景は中国においてずっと変わっていないらしいのと対照的に、私が訪ねた1989年の中国には無くて、1996年や1997年や1999年の中国にも少なくて、『長江哀歌』の中国にはあふれていた物がひとつある。それは、携帯電話。

この映画では携帯電話がきわめて重要な役回りをもって2度出てくる。というか、実際に鳴る。

最初は、その主人公の中年男とやんちゃな若者が、上にも書いた食堂で、心をすこし通わせ心をすこし打ち明け合ったあと、そうだ携帯の番号を交換しようよということになり、我々もよくやるように、若者は男に番号を言わせその場で電話をかける。すると男の着メロが鳴る。若者はオレの着メロも聞いてくれよと自分の携帯にもかけさせる。映画はしばしその中国流行歌とおぼしき2つの旋律で満たされる。控えめにしてかつあまりにも素敵なシーン。しかも、そのやんちゃな若者の携帯は、後になってもう一度鳴る(こんどは通常の電子音)。いっそう決定的な意味をもってもう一度鳴るのだ。でもそこはまだ映画を見ていない人にバラすわけにはいかない。

映画における携帯電話の役回りということなら、韓国映画子猫をお願い』の評でもよく言及される。ああこの映画について私はまだほとんど何も語っていない。正月の韓国ではその舞台だったインチョン(仁川)くんだりまで、ただ漠然と郊外電車に乗って行ってみることまでしたというのに(単に寒くて中華街で飯を食って帰ってきただけだったが)。


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子猫をお願い asin:B0006OFLKY
http://kermit.pos.to/film/040626.html(このくらい語れるといいのだが)