http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20071218#p1
その『タンポポ』のDVD (asin:B000ALJ208) を借りてみてみた。いや〜面白い。伊丹十三の才人ぶりが100%証明されたといったところか。先に述べたとおり、メインの物語の他にそれとは無関係の挿話がやけに充実し、その挿話の細部がまたむやみに充実しているところは、伊丹映画としても異色で、その点きっと映画マニアの心を特にくすぐる一作なのだと思われる。
しかしまあ、ここに映し出される世界とは、私たちの数々の現実のなかでいかにもありそうな光景というのではなく、私たちの数々の「映画という現実」のなかでいかにもありそうな光景であり、それをまたみごとなまでに映画の現実らしく盛り上げ造り上げた、という感じかもしれない。もちろんそれが魅力なのだ。おちぶれたラーメン屋の未亡人である宮本信子。彼女の窮地を救い人生の花を咲かせてやったあと、ほのかな恋心も隠しつつ黙って消えていくトラック運転手の山崎努。こういうのはおそらくウェスタン映画にそして物語一般に類を重ねてきたパターンの一つなのであり、それが分かるからなお私たちは心が温まるのだろう。
まだ若き役所広司と黒田福美が食と性の熱い演技に体を張っているのも見どころ。他にも有名役者はどうなってるんだというほど勢ぞろいしている。大滝秀治や桜金造は昔からちっとも年齢が変わらない気がするのも不思議。あともちろん、これをみて何処にいようと何時であろうとラーメンが食べたくならない人はあまりいないだろう。そんないろいろがあって、観たあとぜひとも誰かと話したくなる映画だ。
……なんてことを言ってたら、今年は伊丹十三没後10年とかで、近々NHKで特集があるらしい。でも『タンポポ』は放送されないようだ。しかしこんな趣向の映画ってそれほど多くはないと思われるので、何かの折にぜひ。