東京永久観光

【2019 輪廻転生】

見も知らぬ東京の町


幻夜東野圭吾)。しかしこういう小説はあっという間に読んでしまう。白夜行(同)と同じでやめられなかった。この分厚さもなんのその。ASIN:4087746682

いろいろ感想はあるが、妙にしみじみしたのは、震災の西宮からすべてを捨てて逃げてきた主人公の青年が、東京でともあれ住みついた所が、曳舟だったこと。

東京も西寄りに住んでいると東方面のことはかいもく分からない。曳舟なんて降りたことはおろか口に出すこともない。そもそも読めるか? 東武伊勢崎線京成押上線、見知らぬ路線の絡まり合うところ、一歩間違えばもう私が子供ならきっと帰れなくなる魔境に思えてならない。バンコクを旅行していてふと、チャオプラヤー川の向こうの街ってどうなってるんだと、不思議で仕方なかったのにも似ている。

その伊勢崎線で行けるらしい千住新橋という所には、青年が職を得た小さな町工場がある。金属加工の仕事を終えて夕方ふたたび電車で曳舟に戻り、アパートへ帰る路には、うまいおかずと純な娘のいる定食屋があるのだった。実際きっとあるとおもう、曳舟には。

http://seidoku.shueisha.co.jp/higashino.html これによれば、曳舟はなんと深沢七郎今川焼屋を開いた所だという。訪ねてみたい。でもやっぱり夢のように帰れなくなりそうで、怖い。そんな行き先の切符を買ったら、きっと地図に出ていない。

いや、適当なことを言っているけれど、曳舟はべつにたいして遠い所ではない。亀有とか柴又ならもっとホントに行くのは大変だが。…とおもいきや、大阪にも曳舟駅がありそっちはマジに消えてしまったらしい。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%B3%E8%88%9F%E9%A7%85_%28%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%BA%9C%29

そういえば大昔、第一次東京時代には江戸川区平井なんてところに住んだことがあったっけ。それで10年ほど前には私もまた職のあてもなく第二次上京したのだった。そろそろまたリセットで、今度はそう、曳舟に向かうか。