東京永久観光

【2019 輪廻転生】

あしたは桶屋の風が吹く


中秋の名月はすぎたが、昨晩は満月だった。

この月がどうやって生まれたかを考えたことはあるだろうか。太陽系の各惑星が形成されつつあった45億年の昔、原始の地球に別の火星サイズの天体が衝突、飛び散った破片が地球を取り巻き、やがて一つに合体していった。それが月だという。他にもいろんな起源説があったが、現在はこのシナリオが最有力とされている。

なんだか壮大すぎて嘘くさいけれど、コンピュータでシミュレーションすると、月くらいの大きな天体がちゃんと1個だけ出来てくるらしい。しかも衝突から月の誕生までは1ヶ月から1年しかかからなかった計算というから、驚いてしまうではないか。太陽系の幼年期には今と違って多数の原始惑星が飛び交っていたので、こうした衝突自体も珍しいことではなかったと考えられている。

しかしながら、今こうして静かに輝いている満月と、天体の大衝突というスペクタクルとは、ちょっとイメージとして結びつかない気はする。

それでつまらないことを連想したのだが、つい先日の安倍総理倒壊もなかなか華々しいイベントだった。これで日本もついに砕け散ったかと思いきや、自民を取り巻いていた塵芥たちはあれよあれよと集積してしまい、気がつくと福田政権のみが、ぽっかりにんまり浮かんでいる。

要するに、その始まりから終りの姿はなかなか予測しがたいということか。

それはそうと、たとえば私の身体が今バラバラに飛び散ってしまっても、それがすぐさま集まって別の身体になりました、なんてことは起こりようがない。生物とはやっぱり非常に複雑なシステムだからということになろう。というかむしろ、太陽系とか天体とかは、デカい割にきわめて単純な物理法則だけで作りうると捉えていいのかもしれない。ビッグバンから銀河が生成され星々の生死が繰り返されるところまでは、誰が背中を押してもこうなったプロセスなのではないだろうか。

では、世界の歴史はどっちなのだろう。生物にまして複雑なような、月の誕生なみに単純なような。はたまた市場経済は。あすの株価や来年の住宅ローン金利はどっちだ。

なにかと閉塞感しか感じられない日本も、なにか巨大な衝突を起こして本当に飛び散らせてみてこそ、途方もなく面白いプロセスを目の当りにできるのかもしれない。いやでも人類はすでに、劇的に崩落していった歴史や経済や建物というのを、最近もいくどか経験してきたような気もするが。

♪ あしたはどっちだ!