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【2019 輪廻転生】

十七年寝太郎(素数ゼミ)


http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.asahi.com/science/update/0604/TKY200706040260.html

17年ゼミ」と聞くと予備校浪人の反復年数みたいで、いくらなんでもそこまで…といった妙な悲哀がかきたてられるのだが、それはさておき。

ふと考えこむ。

Q. あなた(17年ゼミ)は素数が分かるのですか?

A. 少なくとも、あなたがた人間の脳が素数を理解する時のようなカンカクは、吾輩(17年ゼミ)の脳には現れていないのです。したがって吾輩に素数が分かるとは言えませんな。
Q. それなら、あなたの体や遺伝子のほうは「素数が分かる」のですか?

G. G…GG…G………


そもそも素数とは何処に在ると言うべきなのだろう。すなわち素数は人間が発明したのか発見したのか。ぜんたいに「数学は人間の発見なりや、発明なりや」。この問いが再び浮上…したのはいいが、そのまま再び沈んでゆく……


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ここで図を見てみよう。

私がA→B→Cと2km歩いたら、疲れて汗をかき、コップ2杯の水を飲んだとしよう。では、A→Cと斜めに歩いたらどうだろう。私の脳は三平方の定理を知っている。だからA〜C=√2kmという計算ができる。そこから、水も√2=1.4142杯くらい必要と分かる。

つまり、私の脳は数学を知っている。

しかし私は数学がものすごく苦手だとしよう(実際)。それでも私は、A→Cと歩いたならきっと水を√2=1.4142杯くらい欲するだろう。この場合、私の脳は数学を知らない。でも私の体や遺伝子は数学を知っている、ということになるのだろう。

もしそうなら、ヒトの体だけでなくネコの体やセミの体も三平方の定理を知っていると言うべきだ。いやサボテンだって粘菌だってルート計算くらいはできるにちがいない。年金の計算も(社会保険庁は粘菌以下だな、まったく)。


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私たちが知っているこの数学は普遍的なのだろうか。

「この数学」というときに、その数学の範囲がいかなる基盤までを含むのかによるのかもしれない。

たとえば、10進法も2進法も私たちは知っている。10進法と2進法を別の数学体系とみなせば、2進法を含まない10進法は普遍とは言えない。しかし10進法も2進法も同一の体系とみなせば、私たちの10進法は2進法も含めた意味でそれなりに普遍と言えるだろう。

もう少し基盤を広げるなら、「三角形の内角の和が180度」である数学も、そうでない数学(非ユークリッド幾何学)も私たちは知っている。両方を含めた私たちの数学とは、なかなか普遍的ではないか。

では素数はどうだろう。私たちの数学には素数が存在する。そして私たちは素数が理解できる。では、素数が存在しない数学というのもこの地球上に成立しうるのだろうか。そのような数学を私たちは理解しうるのだろうか。さらに、地球を離れてこの宇宙すべての範囲においてなら、素数をもたない数学というものを想定できるのか?

あるいは、私たちの数学では「π=3.14....」だ。ではそれとは別に「π=3.14....」でないような数学も、地球上または宇宙上に存在しうるのか?

そのあたりがよく分からない。単に私が知らないのか、それは誰にも知りえないのか?


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かつて地球人は、まだ見ぬ地球外知性に向け、一続きの電波信号を送ったことがある。信号の数は1679。1679は73×23という素数の積に因数分解できる。ゆえに、その信号から受け手は必ず以下の73×23の図柄を描くことが可能なのだ。

その受け手である地球外知性が、私たちと同じ素数を知っているのであれば。

参照:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%B7%E3%83%9C%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8


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 (1) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20050721#p1
 (2) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20050726#p1
 (3) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20050728#p1
 (4) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20050812#p1


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(追記 6.10)
アレシボ・メッセージだが、図柄を「上から下へ」眺めるというのは、それなりに普遍的だろうか。重力の関係で。「左から右へ」はどうだろう。M13まで行かなくとも、アラビア語圏や昔の日本でもう逆になるのでは?