東京永久観光

【2019 輪廻転生】

本気の言動


うわさの外山恒一さん。都知事選の政見放送YouTube。そのつながりで、おそらくみんなそうだろうが、内田裕也さんの昔の政見放送も鑑賞。

聴き惚れた。仕事の山場の夜だったのに、しばらく手がとまる。頭もよけいに動かさざるをえなくなる。

いや、世の中を本気で変えようと思ったら、そりゃこうなるよ。こうするしかないさ。

もちろん石原氏も浅野氏も東京を刷新しよう社会を改革しようとあれこれ企画を膨らませているだろう。しかし世の中を本当に変えるというのは、そういうことを意味しない。彼らの政見放送はどうせ退屈にきまってる。こちらの予想を超えた政策がそして言動が、彼らの口や体から発してくることはたぶんない。外山さんと内田さんの数分間は、石原氏や浅野氏の本気がどれほど生ぬるいものでしかないのかを、明々白々に示してしまっている。

ただ、みんなが世の中を本気で変えたいかのどうか。じつはそこが問題だ。この社会のしくみや自分が生きるやり方を完全に壊してゼロからやり直すべきだと、心から願っている人はおそらくそんなに多くない。そして断っておくが、社会や人生を本気で変えることが本気で正解なのかどうか、それも私はけっきょくよく分からない。

ちなみに私は外山恒一という名を知っていた。だめ連つながりだ。もう10年前。でまあ、こういう人々のことが記憶からけっして消えない程度には、私も世の中の転覆をいくらかは本気で願っているのだろう。

ただし。じゃあこの10年、世の中は全然変わらなかったのかというと、家賃はタダになっていないし週休5日社会も実現していないが、でもたとえばこうやって外山さんの政見放送とか過去とか、好きなときにいくらでも探しだして再生できる。世の中が本気で変わるというのは要するにどういうことなのか、やや形は違うけれど、私たちはこの10年そうとう強く体験してきてしまったのだと、やっぱりつくづく思う。

高橋源一郎が、あらゆる小説は似たりよったりだが中原昌也小島信夫だけは本気で面白い、というふうなことを述べているのも、外山さんと内田さんの政見放送でちょっと理解できた気がしてきた。http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20061209#p1


ちょいと追加(4.17)
コメント欄のmaritaさん《ある種の直截性でもって「世界を凍らせる」》。今さらながら、そういうことなのだと、納得している。でも、外山さんのあの演説がたとえば飲み会とかで始まっていたとしたら、それはいわゆる「空気読めない」の最大級として排除され消しさられるのみだったのだろう。そういう点では、この「世界を凍らせる」戦略がいくらかでも成功した背景には、知事選候補者という社会性と、NHK政見放送というメディア性とが、不可欠だったということになるのかねえ。