東京永久観光

【2019 輪廻転生】

最近読んだ思想本


現代思想のパフォーマンス』(難波江和英・内田樹光文社新書 asin:433403277X

ソシュール、バルト、フーコーラカンレヴィ=ストロース、サイード。この6人の思想のコンパクトな解説と実践。

最初に読んだバルトの解説編がなんとも簡潔明瞭。現代思想がこんなにわかっていいかしら! が、それはもしやバルトの思想自体が群を抜いて明快で面白いせいではないのかな。逆にラカンはやっぱり難しげ。実践編は、それぞれの思想の図式を当てはめて映画作品などを解読してみせる。この本の売りはこっちなのだろうが、まあこれは学というより芸? もちろん内田さんなどは比類なく芸達者ではあるのだろう。そのバルト理論による『エイリアン』の解読は、基礎的というかベタ的。レヴィ=ストロース理論による『おはよう』の解読は意表を突くが、これまた『おはよう』(小津安二郎監督)自体の味わい深さにはかなわない気もした。

全体として、80年代に読みかじった種々の解説本を改めて読んでいるような懐かしさだった。そして、当時分からなかったところは、やっぱり今も分からないのだと知る。ということは、これからもずっと分からないのだろう。とはいえ、これらビッグネームの思想は常に気になるのであり、たまに触れてはそのたびハッと目を見張ったりうんうん呻ったり、そんなことを繰り返してきて長いので、いいかげん馴染みにはなった。なにか考えるとき、これらの思想を知らず知らず当てはめてしまってもいると思う。あるいは、毎度毎度「また分からなくなった、次こそちゃんと」となるせいで、徒に(悪戯に)長持ちしているのか。

《「部品の勉強はいいから、まず運転してごらん」と私は学生たちによく言う。現に私は内燃機関がなぜ車を走らせるのかも、コンピュータがなぜ動くのかも知らない。知らないけれども、(使っているうちに)それが「何をする」ための道具なのか、それがどのような「夢」に育まれた道具なのか、おのずから分かってくる。それと同じことが学術についてもできるはずだ、というのが私たちの基本的な考え方である。》(あとがき)

思想なんて使えなければ意味がない。同書が貫くアルファにしてオメガの姿勢だが、我々は自ずとそれを遂げつつあるのかもしれない。

今回はとくに、フーコー思想の威力と流布を感じた。蓮實重彦物語批判序説』(ASIN:4120013693)や柄谷行人日本近代文学の起源』(ASIN:4061960180)も、やっぱりフーコーそのままだよなと改めて思った。


 *


生と権力の哲学』(檜垣立哉ちくま新書 asin:448006303X

こちらはフーコードゥルーズアガンベンネグリの系譜を追った形。80年代ではなくむしろ90年代以降の、左翼性を強めた、思想よりは運動の色彩をもった展開、を扱っているということになるのだろう。

ネグリ&ハートの大著『帝国』がすっきり整理され、それこそ使えそうに思えてきた。逆にアガンベンは手強そう。こういう潮流の源にドゥルーズがありフーコーがあるというわけだが、そっちはほとんど読まず。アガンベンについては東浩紀大澤真幸の『自由を考える』(ASIN:4140019670)がけっこう分かりやすい話をしていたと思う。


 *


ついでながら、フーコーの思想は歴史の曲解だったという論がある。
「歴史家としてのフーコーhttp://cruel.org/other/foucault.html


 *


といろいろ書いてますが、私はホントに何も知らないです。