東京永久観光

【2019 輪廻転生】

木を見る西洋人、森を見る東洋人


「パンダ、サル、バナナ」のうち近いもの2つを選べ。そう言われて、私なら「そりゃサルとバナナでしょ。関係があるから」と思う。ところがそうなるのはアジア人ゆえであり、アメリカ人の多くは動物という属性からパンダとサルを選ぶらしい。また、水槽に魚が泳いでいるアニメを見せたあと、何の映像だったかを報告させたところ、アメリカ人は「大きな魚がいました。多分マスだと思います。それが左に向かって泳いでいきました」などと語り始めたのに対し、日本人は「池のようなところでした」などと第一声で述べ、背景の草などにも注意を払ったという。

こんなふうに、西洋人と東洋人でものごとがどれほど違って見えているのかを、数々の心理学実験で裏付けていく一冊、『木を見る西洋人、森を見る東洋人』(リチャード・E・ニスベット、村本由紀子訳)。同書によれば、両者の違いは「西洋人は分析的、東洋人は包括的」など、きれいに整理できる。その隔たりは知覚の特性から思考の様式、社会の選好にまで及んでいて、驚くばかりだ。これが古代のギリシアと中国の思想や文明にも関連づけて論じられる。

私が最も感慨深かったのは、「西洋人はこの世界を直線だと思い、東洋人は円だと思っているのではないか」という指摘。西洋人はどうも、人間はまっすぐ進んでいるのであり、やがてユートピアに達してそこは永遠不変と思っているらしいのだ。それに比べれば、私(たち)は、苦あれば楽あり、山あり谷あり、驕れる者は久しからず、いま良くてもまた悪くなる、そういう無常観にやはり浸っているのではと気づかされる。加速的に上昇するグラフを見せて続きを自由に描かせても、西洋人はそのカーブの勢いのまま先を続けるのに対し、東洋人はカーブを緩和させたり逆に下降に転じるようにするという。アメリカ人である著者は、こうした東洋の世界イメージに驚くのだが、逆に私は、西洋の世界イメージをじっと自分の身に置き換えてみて、ああそうかアメリカ人とはこうなのだと納得するとともに、そこにある違和を改めて実感する。面白いものだ。

『木を見る西洋人、森を見る東洋人』 ASIN:4478910189