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【2019 輪廻転生】

イラク問題ではなく私の問題


美濃口坦「イラク派兵についてどう考えるか」(『萬晩報』)

これを読んで思いきりため息が出た。なぜか。それは美濃口氏の猜疑が、占領軍に対してでもイラク各勢力に対してでもなく、この私(たち)に直接向けられていたからだ。

《今イラクに派兵することは米国の侵略戦争の追認になると考える人は多い。でもこれは筋違いである。侵略戦争犠牲者に良かれと思ってを援助することが侵略の追認なら赤十字の活動の多くがそうなる。本当は、米国を助けることを多くの人が我慢できないのではないのか。でもここで「我慢できない」のは、自分たちが無力で侵略した張本人を処罰できないこと、また国際社会に(国内と異なり)警察も裁判所も存在しないことに対してである。でも自分たちの国が無力で、国際社会がこうであるのは昔からの不愉快な事実であり、この事実に直面することは戦争の追認にならない。》

では美濃口氏は、自衛隊派遣にも同意するのか。……というと、微妙に違う。日本における自衛隊派遣の議論は、まるで《…何が何でも結婚したい結婚至上主義者と独身至上主義者の論争…》だとして非難する。どういうことか。

《米国からの圧力があるかもしれない。でもそれ以上に、憲法九条問題で既成事実をつくりたい日本政府にとって、武装兵士の海外派遣そのものが自己目的になっているのではないのか。とすれば、これは、結婚したいだけで、相手かまわずに結婚したがる人と似ている。だから相手、つまりイラクのことなど本当はどうでもよいのである。》

イラク派兵に反対する人々にとって、派兵、すなわち結婚そのもに反対することが重要で、相手、すなわちイラクの事情も二の次である。だから反対するために何が何でも「戦闘地域」にして、「占領軍に抵抗するイラク国民」と思いたいのではないのか。》

とにかく実に深く考え抜かれている。こうした意見は、テレビでも新聞でも国会でも中心に躍り出てよさそうなのに、そうなっていないようなのは、これいかに。