東京永久観光

【2019 輪廻転生】

これだけとも、これで十分とも


阿部和重シンセミア』やっと手にした。これはスゴい。現代人の思考や感覚を担っている歯車の総てが否応なくフル回転させられる、とかなんとかいろいろ言いたいことは後にして、とにかく読み耽ってしまう小説。まさにsinsemillaのごとし。正月にかけてちびちび楽しもうと思っていたが、あっという間に下巻突入。押し詰まる年の瀬を上回るスピードだ。感想も年内ということになるか。ああ忙しい。やはり年賀状は無理。

ともあれ、まだ途中だが、『シンセミア』を2003年のベスト本としよう。『INVITATION』『SIGHIT』などの雑誌で今年の総決算をぱらぱら見たが、『シンセミア』の評価は高いようだ。

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ではベスト映画はというと、見た数があまりに少ないから無難なところで、というのではなく、あえてアキ・カウリスマキ過去のない男』を改めて心に刻んでおきたい。世界も私も国の予算もなんだかジリ貧の昨今、この映画から得られるような力だけは本当の糧になるんじゃないかと、ヤワなようでヤワではないそんな期待を込めて。

ちなみに、昨夜NHKで放映されたドイツ映画『ハンネス、列車の旅』は、主人公が心優しき独り者の中年男であること、かつ時刻表マニアという変わり者であること、さらには国際時刻表選手権大会なんてものがあってその様子が淡々と描写されること、などなどカウリスマキ風の脱力テイストに溢れた一作だった。その大会が行なわれるのがフィンランド辺境の町という設定でもあり、主人公は鉄道やフェリーを乗り継いでそこを目指す。おまけにヘルシンキに向かう列車(だったか?)では、なんと食堂車の乗客にカティ・オウティネン(カウリスマキ映画の看板)が座っている。テーマとストーリーがちょっときれいにまとまりすぎの感はあったけれど。

参照サイト

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音楽となると新作になおさら触れていない。『ハルカリベーコン』くらいしか思いつかない。しかしこのCDは、歌詞にもサウンドにも多彩な記憶とスキルを惜しみなく盛り込んで練りに練って仕上げた最高質の一枚だろう。CCCDなのになぜかすんなりコピーできた(しかもマック)という点もポイント高い。

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さて重大ニュースとなると、これはもう「イラク戦争」で決まり? だがそう思ってしまうところに、世界の帝国化という以上にメディアを介した世界像の帝国化があると疑ってみてはどうだろう。イラク戦争は本当に私にとって重大なのか。 たとえば2003年の第1位に「ブログ」を選んでもいいのだ。もはや平気で「ブログ」と書くようになった年。