東京永久観光

【2019 輪廻転生】

ゆかし、をかし

先週は小津安二郎の映画ばかり見ていた。NHK-BS(参照)。『小早川家の秋』『一人息子』『晩春』『彼岸花』『秋刀魚の味』ときて、生誕100年の12月12日には『東京物語』。

ここまで連続すれば、小津スタイルがいやでも察知されてくる。日本家屋の玄関や居間や二階。真正面を向いたニコニコ顔。ぎこちなくハキハキした台詞。こう同じものばかり毎晩見てどうするんだと自分にツッコミを入れつつも、律義に同じように味わっている。正月の雑煮でも食べるような折り目正しさだ。いや映画の季節としてはお盆の時分か。親類縁者がこれといった理由もなく集まる。やっぱり笠さんが来ないと始まらないね、と。

小津作品に惹かれたとされるホウ・シャオシェンヴィム・ヴェンダースの映画のほうが、当の小津なんかよりずっと素晴しいとこれまで思っていたけれど、改めて見ると『東京物語』『晩春』などは負けず劣らず良い。贔屓になった。ついでに、今では知らない人も多そうなので書くと、ジム・ジャームッシュストレンジャー・ザン・パラダイス』で、主人公たちが部屋にいてラジオかなにかで競馬のことを気にしている場面に「トウキョウ・ストーリー」という馬の名が出てくる。

東京物語』は1953年の作品。だからちょうど50年前の風景だ。50年たてば役者もたいてい死んでしまう。ところが早々と表舞台から消えた原節子さんだけが御健在らしいというのは、やはり不思議。

それにしても、原節子のあの笑顔アップはどこかホラーっぽくもあって、子供なんかつい泣き出すんじゃないかと余計な心配をするのは私だけ?

しかしなんの実質もない日記だった。