東京永久観光

【2019 輪廻転生】

非印刷系

アマゾン(米国)で書籍の全文検索が可能になったというニュース。これぞグーテンベルク以来の大革命!? と目を見張ったのだけれど、待てよ、そのまえに、ウェブ日記など(ブログ)を通じて、書籍にすらなるはずのなかった個々人の日々の膨大な思考が、一気に文字化されデジタル化されネットワーク化しつつある変容のほうが、そもそもずっと重大なんじゃないか、と思い直している。●かつて特定の階層が支配していた政治や経済という営みは、近代に入って人々にあまねく開放された。でもこの書き言葉という支配構造だけはだいぶ違う。文化や文学の市民革命は、近代史としてあまりに遅きに失したものの、20世紀末になってはからずも勃発した。…なんていうとオーバーか。●焦点は「読む・書く」のうち「書く」にある。「書く」という行為は、インターネットという場と機会が等しく与えられることによって、ようやく一般人の日常に定着しつつある。この話、ここでなんども繰り返しているが、まあそう思う。●マクルーハン(大阪人ではない)、というとテレビについていろいろ洞察した人という位置づけだが、『グーテンベルクの銀河系』という著書がある。どうやら、そのグーテンベルクの印刷術がもたらした激震の意味を考え抜いている(全部読み通したことはない)。書物がことごとく手で書き写すしかなかった時代、読書とは声を出して行なうものだったり、記憶を目指して行うものだったり、といった事情を、無数の資料を滑空するかのようにして追想していく。そして、そこに訪れた「印刷術の出現」は「文字の出現」にも匹敵するとマクルーハンは考える。●そんなわけで、「アマゾン全文検索」や「ブログの出現」は、それに匹敵する激震じゃなかろうかと思うのだ。

●ちなみに『グーテンベルクの銀河系』には『薔薇の名前』(ウンベルト・エーコの小説)のムードがちょっと漂う。それと、最近『グーテンベルク銀河系の終焉』(ノルベルト・ボルツ)という本も出た。どれも近所の図書館にある(ときどき私の家にある)。これからは全部アマゾンにあると思えばいいのか。

グーテンベルクの銀河系 ASIN:4622018969
薔薇の名前 ASIN:4488013511
グーテンベルク銀河系の終焉 ASIN:4588006576
tokyocat住基ネット ASIN:58660147893(冗談)