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【2019 輪廻転生】

ほんとうに困難なこと

気になる本。太田昌国「拉致」異論』。朝日新聞の書評にこうあった。《…いま必要なのは、(…)洪水のようにあふれる「正論」に誰もがぼんやり感じているだろう異和感を言葉にすることだ。だが、それは難しい。「異論を許さぬ、不自由な空気」が流れているから。けれども、著者は全身をかけてその困難に立ち向かうのである。》(高橋源一郎

しかし、さらに気になること。太田さんや高橋さんは、その「異論を許さぬ、不自由な空気」がどこに流れていると感じているのだろう。おそらく、家族会や救う会の言動に、あるいは世論に、ということだろう。では、その「正論」は、太田さん自身の見解には最初からまったく存在していなかったのだろうか? もしも、その正論が論敵だけに存在しているのなら、異を唱えるのはさほど困難ではないと思うのだ。もちろん、これは仮の話だ。太田さんがそうした不自由な空気を外部にしか想定していないのか、それとも自身の思考にも感じているのか、それは少なくとも同書を読まないとわからない。