東京永久観光

【2019 輪廻転生】

やせ細らない作家

島田雅彦自由死刑』(1月に文庫化)。自殺を決意した男が、AV女優と温泉めぐり、グルメ三昧、アイドルと逃避行、銀座で買い物、等々。ちなみに主人公は35歳で、連作開始時(96年)の作家と同年。悪辣で豪勢な夢想とサスペンスに浸るのは楽しいが、これはもしやセレブな島田雅彦の本気願望かもと思うと、ちょっとバカバカしい。●自由死(自殺)という深遠な問いを徹底追及しつつ娯楽性も忘れない、というよりは、休暇ドライブを楽しみつつ深刻ムードも味わえる作品。『東京カレンダー』『サライ』『一個人』といった中年贅沢雑誌に、パブリシティーを兼ねて連載したとしても成立しそう。まあ堅苦しくなくかえって面白かったのだけれど。●島田雅彦の知性と文才は、今なお「時代を担う」のポジションとして余人には代えがたいようなことになっている。このくらいの意地悪な感想など平気、平気。さらに期待。