東京永久観光

【2019 輪廻転生】

悪態の系譜

ナンシー関が死んで1年(12日)という。河出書房の特集本(2月刊)にうながされ、『秘宝耳』『耳部長』などを堪能していたところだった。加えて、町山広美のインタビュー(99年)が最近ネットで話題だったことがあり、二人の共著『隣家全焼』も噛みしめるように読んだ。●悪態のかぎりをつくせば批評に至るのか、批評をとぎすませば悪態に至るのか、ともあれ、この容赦ない正確さが薫陶したものは大きい。ナンシーの血脈は、たとえばウェブサイトに、一定の口調や態度を特徴づける形でまちがいなく受け継がれている。●ただし、テレビという宿痾は、ナンシーや町山の毒薬に、勝るとも劣らない。芸能人のおぞましい瘴気は日々絶えることなく、ナンシーは24時間、孤軍奮闘だったことだろう。●それに比べると、日々ウェブサイトで接する非有名人のコンテンツには、おぞましいものもあるけれど、素晴らしいものも実に多い。テレビと違い、悪態よりため息をつく毎日だ。