東京永久観光

【2019 輪廻転生】

結線館

●『圏外からのひとこと』が、現代を幕末や明治維新になぞらえていたけれど、さしずめ『Hot Wired Japan』などは藩校に似た役割が期待されるのかもしれない。風雲急。そんな時代変化を察知し、中央の支配層(幕府やマスコミ)とは別個に、新しい知性、人材を登用して改革を思案する。「黒船なにするものぞ」。そう、黒船とはたとえばブログだ。いや、ブログの黒船は『Hot Wired Japan』が手先になって呼び寄せたとの噂も瓦版にはあった。じゃあ「尊王攘夷」……Joi? ●新しめの経済学についても、俊英がそろい踏みだ。最近は『ケイザイを斬る!』を習いに行った。師範の野口旭先生は、同じく師範の池田信夫先生に襲撃されたりもしているが、それもまた幕末情勢のややこしさだ(池田屋事件?)。●『ケイザイを斬る!』はデフレの元凶について3回に渡って講じた。そのおかげで無学な私もはっきり悟った。「日銀が悪い」。…いや悟ったのはそれだけだ。でも何も分からないよりはるかにマシではないか。たとえば「朝まで生テレビ」でも、政治や社会がテーマであれば、その対立点におおよそ見当がつき、左席がなるほど「左」か、右席はやっぱり「右」だ、とどうにか納得できるのだが、経済となると誰と誰の主張がどう近くてどう遠いのか、さっぱりだったのだ。が、『ケイザイを斬る!』を読んだので、次の「朝生」が少し楽しみになった。●その勢いで、野口師範の『ゼロからわかる経済の基本』(講談社現代新書)を読んだ。これまた、「週刊こどもニュース」に負けない平易さだ。本当にゼロから教わった気がする。基本を知っている人なら天を仰ぐほどの基本だったのではないか。私の経済知識も「0」から「0.8」ぐらいまで上昇。いやまずは「1」に近づくことを望んだのだから、成果は十分だ。『ケイザイを斬る!』にあった「インフゥレタァゲッチング」って具体的にどうやるのだろうとの興味がわき、そのあたりを詳しく知りたかったのだが、そうした記載はなかったので「1」をやや下回ったというわけ。●稲葉振一郎師範の『地図と磁石』も以前からだいたい拝聴している。これは『ケイザイを斬る!』と違って初学者向きではない。十倍は頑張りが必要だ。が、得られる知識も十倍だから、まあしかたなかろう。今回から「マルクス主義総まくり」ということらしい。これも実に面白かった。今さら『資本論』ファンになってしまいそうな、いやそれどころか、マルクス主義者にまでなってしまいそうな面白さだ(もちろん稲葉師範の狙いはそんなところにはない)。●『黒船なにするものぞ』(柳田昭)は書名です。